重要なポイント
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インフレはマーチャントと消費者に重くのしかかっている
物価の上昇と買い物客の支出削減により、利益率が低下
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経済の不確実性に適応することが唯一の確実な戦略
ブランド各社は、戦略的な価格設定、タイムリーなディスカウント、新たな収入源、間接費の削減などで対応している
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顧客ロイヤリティは双方に利益をもたらす
ビジネスはリテンションへの投資によって、長く続く信頼関係を構築している
購入者の購入額と購入頻度が減少
パンデミックの余波、一部の国におけるロックダウンの再実施、ロシア・ウクライナ戦争の大惨事によって、サプライチェーンの危機が続いており、特に生活必需品、食料、燃料の価格が高騰しています。中央銀行による利上げに伴い、企業や消費者の借入コストが上昇し、過去40年で最悪のインフレを引き起こしています。
世界貿易機関 (WTO) は、2022年の貿易取引量は3.5%増と予測しています。これは前回の予測値である4.7%から下方修正されました。さらに2023年には1.0%まで貿易取引の成長率が下がるとWTOは予測しており、経済の不確実性と物価上昇が購入者の支出額減少の原因となっています。2022年には買い物客の40%以上が、スーパーマーケットの低価格のプライベートブランド商品に切り替えています。全世界のShopify Plusマーチャントを対象としたアンケート調査によると、35%が1回あたりの平均購入アイテム数が減少したと回答し、50%がサイトトラフィックとコンバージョン率が低下したと回答しています。
数値の単位はすべて米ドルです
2023年、社外の投資家から資金を調達しているブランドの73%では、特にキャッシュフローが制限されています。投資家はROIのしきい値を引き上げていますが、Shopify Plusを利用している企業の90%超を含む多数のブランドが、コスト上昇によって収益が悪化している中で、このしきい値を達成することは困難です。25%超の企業は、弱い景況感が、2023年の資金調達をさらに困難にすると予測しています。ブランドの33%は、資金調達に関する最大の懸念は、商品価格とともに上昇している金利であると回答しています。*投資家は、世界各国の中央銀行が2023年には金利をほぼ4%に引き上げると予測しています。これは2年前に比べ2倍の金利となります。
堅牢なブランドはインフレと闘いながらお客様のニーズに応えている
多くのEコマース企業は、パンデミック後の停滞の中、売上は横ばいになると見越して準備していました。しかし、2022年のさらなる景気の落ち込みにより、多くのブランドが不意打ちを食らいました。世界中の企業の70%以上は、2023年に発生する可能性がある不況に備えています。*各企業で競争力を維持するために、価格設定、運用体制の改善、成長戦略の再考が進められています。
Nature’s Select Pet Foodの最高ブランド責任者であるMegan Sanchez氏は「お客様にコスト増を転嫁しないように最大限努力していますが、2021年には主力商品の値上げを2回行いました。これは当社としては非常に珍しいことです。このような状況により、値上げの理由となっている、商品、燃料、輸送のコストについて説明することにしました」と話しています。
短期的に売上を高めるために価格を下げているブランドもあります。迅速かつ大幅なコスト削減は魅力的ですが、ブランドは目先の経済的損失の削減と将来への投資のバランスを見極める必要があります。単に生き残るのではなく成長するための最大の鍵は、ブランドが持つ資産の1つである顧客ロイヤリティに投資することです。
ロイヤルカスタマーは、短期的な売上よりもはるかに価値があります。実際、2021年の調査では、ロイヤリティによって顧客の価値は22倍増になると推定されています。ロイヤルカスタマーは購入の可能性が高く、その確率は新規顧客の5~20%からリピート客では60~70%と大きく高まるため、販売コストを低く抑えることができます。
お客様との強い信頼関係を築くことができれば、値上げが受け入れられる可能性も高まります。ロイヤルカスタマーの約40%は、より安価な代替品があってもブランドの商品を購入し、60%は信頼しているブランドを他の人に紹介します。
ブランドが顧客ロイヤリティを高めながら、キャッシュフローを維持する方法をご紹介します。
K. Sudhir教授 イェール大学 民間企業、マネジメント、およびマーケティング学調査の結果、お客様との関係を構築し、維持し続けた会社は不況後も好調であることがわかりました。
2023年にキャッシュフローと顧客満足度を同時に改善する方法
1. 戦略的な価格設定
インフレに先立って商品価格を毎日とは言わないまでも、毎週変更するブランドがあります。調査対象の企業のうち80%以上が、インフレが原因で商品を値上げしたか、または値上げする予定であると回答しています。*買い物客のほぼ90%は、信頼できるブランドの商品であれば値段が高くても購入するため、強力なブランドは顧客離れのリスクが低い状態で値上げすることができます。
注目を集めるために、逆に価格を据え置くブランドもあります。Old Navyは新学期向けのマーケティングで「Price ON-Lock (価格据え置き)」キャンペーンを展開し、顧客への共感を示しました。このアパレルブランドは当初、新学期用の出費の負担を軽減するために子供服の価格を据え置くことを約束しており、すぐにそれを全デニム商品にも広げました。
インフレに先立って商品価格を毎日とは言わないまでも、毎週変更するブランドがあります。調査対象の企業のうち80%以上が、インフレが原因で商品を値上げしたか、または値上げする予定であると回答しています。*買い物客のほぼ90%は、信頼できるブランドの商品であれば値段が高くても購入するため、強力なブランドは顧客離れのリスクが低い状態で値上げすることができます。
注目を集めるために、逆に価格を据え置くブランドもあります。Old Navyは新学期向けのマーケティングで「Price ON-Lock (価格据え置き)」キャンペーンを展開し、顧客への共感を示しました。このアパレルブランドは当初、新学期用の出費の負担を軽減するために子供服の価格を据え置くことを約束しており、すぐにそれを全デニム商品にも広げました。
英国の健康・美容商品の大手小売業者であるBootsも、顧客の予算への不安に対応するために、自社ブランドの美容商品1,500点の価格を据え置きしました。2022年8月と10月には、フランスのスーパーマーケットチェーンであるCarrefourと、カナダのLoblaw Companies Limitedが、お客様がインフレを乗り切ることができるように、自社ブランド商品の価格据え置きを約束しました。この対応は既存の顧客から好感を持って受け止められ、新規顧客の獲得にもつながりました。
価格据え置きは、顧客ロイヤリティへの長期的な投資ですが、顧客のためにインフレのコストを吸収できないブランドもあります。実際、調査対象の企業の81%が、インフレ対応策としてすでに値上げを実施しています。ただし、ブランドが値上げを避けるべき部分があるとすれば、それは配送料です*。店舗受取や配送などの無料配送オプションがあれば、買い物客の注文回数が増え、より高価な商品を購入し、平均注文金額が増加します。
無料配送の事例
注文アイテム数の増加
より高価な商品の購入
購入額の増加
*これらの結果は、オンラインストアの条件付き無料配送に関連していると考えられます (例:「xドル以上のご注文は配送無料」)
出典: 2021年5月14日から2022年7月7日までのShopifyチェックアウトに関する社内データ
2. ロイヤリティを高め、購入を促進するためのディスカウント
新規顧客の獲得を図るよりも、既存顧客からの売上を拡大させる方がコストがかかりません。ブランドは、ロイヤルカスタマーに優待割引を提供することで、購入を促進することができます。
バンドル商品や期間限定セールによるディスカウントをお客様向けにパーソナライズされたおすすめとして宣伝することで、売れ行きがよくない商品の販売を促進できます。
Pay-now-buy-later (前払い) プロモーションも、ブランドとお客様にとってウィンウィンの戦略です。ストアクレジットや、商品やギフトカード購入時のクーポン提供によって平均注文金額を増やし、キャッシュフローを改善することができます。GapCashプログラムでは、お客様が「GapCash」期間限定で使用できるクーポンを提供することで、期間限定効果を活用した施策が実施されています。
少額のディスカウントであっても、このようなモデルを採用すればお客様への値引き提供も簡単に行えるので、ビジネスはすぐに現金を得ることができます。
新規顧客の獲得を図るよりも、既存顧客からの売上を拡大させる方がコストがかかりません。ブランドは、ロイヤルカスタマーに優待割引を提供することで、購入を促進することができます。
バンドル商品や期間限定セールによるディスカウントをお客様向けにパーソナライズされたおすすめとして宣伝することで、売れ行きがよくない商品の販売を促進できます。
Pay-now-buy-later (前払い) プロモーションも、ブランドとお客様にとってウィンウィンの戦略です。ストアクレジットや、商品やギフトカード購入時のクーポン提供によって平均注文金額を増やし、キャッシュフローを改善することができます。GapCashプログラムでは、お客様が「GapCash」期間限定で使用できるクーポンを提供することで、期間限定効果を活用した施策が実施されています。
少額のディスカウントであっても、このようなモデルを採用すればお客様への値引き提供も簡単に行えるので、ビジネスはすぐに現金を得ることができます。
Paul Rogers氏 Vervaunt 共同創業者兼マネージングディレクタークライアントの多くは成長率予測を下方修正しています。相当数のクライアントがテストに予算を割いていましたが、企業は顧客生涯価値の向上やリピート購入の促進に注力しているため、そのうちの一部は保留されています。
3. 定期購入またはメンバーシップの追加
不安定な経済状況下において、オンライン定期購入サービスや商品の自動補充サービスの人気が高まっています。これらのサービスはお客様にはより良い条件と価値を提供し、月間経常収益が得られることで外部の投資家に好印象を与えます。
Margo Hays氏 TSG Consumer Partners デジタル戦略担当マネージングディレクター投資会社である弊社は現在、不況に強い企業に注目しています。そのような企業は、より便利なものを求める顧客のニーズに応える定期購入サービスや会費制度から収益を得ています。
インフレ下において、消費者への直接販売を行うブランド、特にペット商品や食料品のブランドは、定期購入を節約術としてマーケティングしています。中には、定期購入価格を生涯にわたって据え置くと約束することで、購入者の登録を促しているブランドもあります。
メンバー制のゲーテッドデジタルコミュニティも増えています。お客様にとっての主な魅力は、商品やイベントなどへの優先アクセスなど、オンラインコミュニティでの特別感です。メンバー専用の特典はお客様にとっては非常に魅力的であり、スポーツウェアブランドのLululemonは、今後5年間で顧客の80%がメンバーシップに登録すると予測しています。
Lululemonが目指すのは、Lululemon Studioメンバーシップによって、業界で最も没入感のあるフィットネスマーケットプレイスを構築することです。同ブランドは、ロイヤリティプログラムに無料会員プランを設けています。無料メンバーは、容易な返品、期間限定の先行販売の利用、バーチャルコミュニティイベントなど、商品取引関連以外の特典も利用できます。ただし、有料メンバーになって得られる体験はこの比ではありません。
有料メンバーは、世界有数のインストラクターによるライブストリーミングのコーチングセッションへの無制限アクセス、実店舗での体験クラスへの招待、店舗と提携スタジオでのディスカウントを利用できます。このプログラムのコネクテッドフィットネスからの収益はパンデミック後に減少したものの、最高経営責任者のCalvin McDonald氏は、Lululemon Studioは新規顧客の獲得とブランドロイヤリティの強化に貢献したと語っています。
4. 間接費の削減
ブランドは景気の低迷を、非効率性を解消し、ブランドミッションにそぐわないプロセスを整理する機会であるともとらえています。より多くのブランドが固定間接費を削減することで、不況が終わっても身軽に運営できるようになるでしょう。
McKinseyのレポートによれば、倉庫およびフルフィルメントの労働力をめぐる競争が激化する中で、倉庫業務のオートメーションは、持続可能な成長に欠かせないものとなっています。ワークフローオートメーションの世界市場における、2022年から2030年にかけての年間複合成長率は23.4%と推定されており、2030年末には7,880万ドルに達する見込みです。関連するトリガー、条件、アクションに基づいて動作する、「設定すれば、あとはおまかせ」のワークフローは、プロセスを簡素化し、ヒューマンエラーのリスクを低減し、リソースを解放します。
注目のマーチャント
Shopify Capitalからの資金調達で前年比3倍の売上を達成したFable
2019年に設立されたFableは急成長を遂げ、同社の美しい家庭用品は再入荷と同時に即完売しています。しかし、多くの若いブランドと同様に、在庫補充はFableにとって課題でした。
CEO兼共同創業者のJon Parenteau氏は、新しい企業がサプライヤー契約を結ぶと、資金に大きな制約が生じると語ります。ほとんどのブランドは、企業の立ち上げと拡大をベンチャーキャピタルに頼っています。調査対象の900社の73%が、事業拡大のために外部からの資金調達を確保する予定だと回答しています*。ただし、これには時間がかかる可能性があります。
Fableにとっての解決策はShopify Capitalでした。Shopify Capitalは、キャッシュアドバンスやローンとして企業に資金を提供しており、承認完了後数日で資金が利用可能になることもよくあります。
すぐに利用できる資金が増えたことで、Fableはポルトガルと日本にある持続可能な提携先工場からより多くの在庫を確保することができ、サプライヤーとの関係を強化できました。その後、一貫した売上が得られ、定期的に商品を補充するようになったことで、サプライヤーとの交渉が容易になりました。わずか1年で在庫は2倍に、売上は3倍に増加しました。
Fableには多くの資金調達手段がありましたが、インフレ下でも費用が固定額であるという点からShopify Capitalを選びました。Shopify Capitalを利用する上で、事業における資金使途に関する条件は一切ありませんでした。同社は今年、新たな資金調達ラウンドを利用し、英国内での事業拡大への投資を予定しています。
「Shopify Capitalがなければ、これほどすばやく動けなかったことでしょう。追加の資金が得られるので、迅速に行動し、目の前に現れたチャンスをすぐにつかむことができます」とParenteau氏は語ります。
マーチャントによって結果は異なる可能性があります。
Shopify Capitalによるアメリカでのローンはすべて、WebBankにより提供されます。
Tina Luu氏 Fable 共同創業者兼CTOベンチャーキャピタルを取り込もうとすると、半年間フルタイムでその業務に従事しなくてはならなかったでしょう。膨大な時間が必要とされます。Shopify Capitalなら簡単で、頭を悩ますことは何もありません。投資モデルの構築や、投資家や債権者との連絡にかかりきりになる専任担当者を2人も付けることなく、より重要な業務に時間を割くことができます。
Shopifyがお手伝いできること
柔軟なビジネス資金で適応力を高める
Shopify Capitalでは自由に資金の使い道を決められるので、自立性を維持することができます。ビジネスプランやピッチ資料、長い書類を作成する必要がないので、その分重要度の高いタスクに時間を費やすことができます。
Shopify Capitaでは、予測可能な固定費用で資金を調達できるため、金利の変動や複利の影響を受けることなく、投資計画の不確実性を排除することができます。
Shopifyマーチャントの方は、Shopify Capitalの資格要件をご確認ください
「今すぐ購入、後で支払う」の提供
実店舗でもオンラインでも「今すぐ購入、後で支払う」オプションを提供するブランドが増えたため、2022年には同決済オプションの導入が大幅に増加しました。実際、「今すぐ購入、後払い」の決済は、2019年比で438%と大きく飛躍しました[^3]。購入した商品を長期的に支払うことができる柔軟性を消費者に提供することは、販売の成否に関わってきます。特に、消費者がこれまで以上に出費に慎重になっている時期にはなおさらです。
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