重要なポイント
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Cookieの廃止
顧客獲得費用が上昇し続ける一方で、データプライバシー規制強化が進む
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ファーストパーティ顧客データの重要性が高まる
ブランド各社は、ビッグデータを頼みにする代わりに、自社データを使ってオーディエンスに関連性が高くパーソナライズされたコンテンツを用意し、エンゲージメントを促進している
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ブランド間の連携が進む
他のブランドやクリエイターとのコラボレーションが新しいオーディエンス、そして顧客ベースを得るきっかけを生み出している
データの難題:消費者のプライバシーが改善される一方で広告の費用対効果が悪化
オンラインストアの数が2020年と比較して2021年には2倍になりました。2022年に調査したグローバルコマースの意思決定者350名によると、同年、成長を達成する上で最大の障害となったのは競争だったとのことです。**この競争に加わる小売業者が日々増え続けるなかで、2,600万を超えるECサイトがターゲット消費者の限られた時間と注目を獲得しようと、しのぎを削っています。しかし、ブランド各社がこれまで頼りにしてきた広告ツールは、信頼性が低下しています。ロックダウンのピーク以降、広告の費用対効果は低下し続けており、これは大手広告プラットフォームのクリック単価が首位を目指す競争に加わっているためと思われます。
数値の単位はすべて米ドルです
有料検索クリック単価は、2021年第3四半期に前年比で、すべてのカテゴリーで上昇
出典: Statista
サードパーティCookieの非推奨が広告課題に追い打ちをかけました。AppleとMozillaはすでにCookieを廃止し、Googleも2024年に廃止予定としています。Appleが2021年10月にユーザーによる追跡機能のオプトイン化を開始した際、一晩で追跡アルゴリズムの精度が30%失われ、推定100億米ドルの広告収益が失われました。大手IT企業が消費者プライバシーをより重視する動きは、ブランドがターゲットオーディエンスにアプローチし、トラフィックを生みだし、取り組みの効果を測定することをより困難にしています。
しかし、これらの会社は人々が求めていること、つまりプライバシーの重視に対応しているだけなのです。わずか33%のお客様が、ブランドが責任を持って顧客データを利用し、地域の政府機関が市民の保護に取り組んでいると考えています。カリフォルニア、中国、ブラジル、EUなど、世界中で新規制の導入や規制変更が実施されており、施行されるプライバシー法の数も増えています。
プライバシー規制によって、マーケターの潜在顧客をターゲットにする能力が阻害されていることは否定できません。ボストンコンサルティンググループの調査により、マーケターの95%が、すでにこのデータプライバシー傾向のデメリットを経験したか、今後1年間で経験するだろうと見込んでいることが明らかになりました。
マーケティングでサードパーティのデータに頼るブランドにとって、大規模なパーソナライズは数あるデメリットの1つです。ただし、71%の消費者は依然として個人に合わせた対応を望み、ブランドの81%はパーソナライズされたユニークな体験が今後のコマースの成長で重要な役割を果たすと考えています。*そのため、サードパーティデータの役割に置き換わる新しい方法を見つけることがマーケティングの課題となるでしょう。
自社データがデータ危機の解決策となるか?
多くのブランドが独自のお客様データを収集してサードパーティCookieによる穴を埋めています。ある意味でこれは機能改良です。サードパーティデータは徐々にコストのかさむものになっており、限られた期間しか利用できないことが多く、精度も確かなものではありません。ある調査によると、企業は広告効果を4,000%以上も過大評価しているとのことです。
対照的に、企業は独自の顧客データを完全に掌握しています。データが収集された時間、方法、理由を正確に把握しており、このデータは恒久的にその企業が所有できます。また、このデータはブランドと直接やり取りする消費者から収集されているので、関連性が高い場合が多くなっています。その上、お客様は、統合されていて透明性や人間味のある体験を望んでいますが、サードパーティCookieはそのような体験を提供することはできません。
この混乱の中で、新規顧客獲得についての朗報があります。新しいブランドを進んで試そうという人々が増えているのです。2020年には消費者が新しいブランド購入することに前向きな傾向は見られませんでした。38%のお客様が、単一の小売業者での支出を増やしていました。しかし、厳格なロックダウンが緩和され、市場でのオプションが増えると、41%の消費者がブランドを切り替えています。
新規ストア、新商品、新しい購入方法のいずれかで、75%の消費者がパンデミック中に何かこれまでと異なることを試しました。また、現在のインフレの影響で、消費者は最もお買い得な商品を探し、より柔軟に変化を受け入れるようになりました。買い物客の3分の2がよりお得に買い物をするためにそれまでのブランドから離れており、58%はより高品質の商品を求めてブランドを切り替えています。
ただし、自社データだけでは解決できない「新規顧客を見つけて引き付けるにはどうすればいいのか」という大きな課題が残ります。先進的なブランドで新たに出現したその解決策は、コラボレーションです。
マーケティング競争に勝ち抜くためにブランド間のコラボが行われている
企業は、競合他社をコラボレーターに変えることで、ブランドとファンの構築の枠組みを見直しています。
コラボレーションは、デジタルの世界ではまだあまり活用されていませんが、コマースの世界では常に取り入れられてきました。複数のブランドを紹介する提携によって、互いのファン層にリーチを広げることができます。カーディーラーは、同じ通りで営業することで、ターゲット市場以上のものを1か所に集め、売上の可能性を高めることができます。
コラボレーションによって、コンバージョン費用を押さえながら、ブランドは新しいオーディエンスにアクセスできます。共通の友人を通じて出会うのと、予約なしの訪問販売との違いのように、コラボレーションを通じてブランドがリーチしたお客様は、セールストークに積極的に耳を傾ける可能性が高くなります。
Adobeの元製品管理担当ディレクターである、Asa Whillock氏は「弊社では社内外を問わず適切な事業提携やデータ連携への重点的取り組みに期待しています。あらゆる業界の会社が連携し、お客様からの明示的な許可を得てオーディエンスを共有します」と述べます。同氏は次のトレンドは、「企業、つまりブランド同士が緊密に協働し、安全で中立的な環境で、正式な自社オーディエンスを (もちろん消費者が同意の上で) 交換するようになる」と予測します。
Alex Danco Shopify ブロックチェーン&システムシンキング担当ディレクター最大のビジネスチャンスは、コラボレーションです。あなたのことを競合他社としてではなく、協力者、ひょっとしたら味方や友人としてとらえてもらえるよう、あなたへの興味と関心をもつ購入者を増やすには、コラボレーションが一番です。ファン層を新たな種類のブランドを出会わせる最も効果的な方法といえるでしょう。
コラボレーションは、各ブランドが独自性を薄めることなく新しいオーディエンスを開拓できる、まさにウィンウィンの方法といえます。
2023年にコラボを実現する方法
1. 他社ブランドとのコラボレーション
コラボの話題が常連客の間で新たな期待感を生み出し、これまで参入が難しかった市場でも関心をかき立てます。ブランドは、同社商品へ新たな注目を集め、ブランドに新鮮なイメージをもたらすことができます。
ニューバランスは、コラボでブランドイメージを「お父さんの靴」から「誰もが欲しがる靴」に変貌させました。機能重視のスニーカーブランドとしての100年以上の歴史を経て、今や俳優、ラッパー、スーパーモデルが愛用するブランドになりました。
音楽から芝居、スポーツまで、多様な市場でのパートナーシップによって、ニューバランスは、ファッション意識がより高いオーディエンスに共鳴するストーリーを伝えるための影響力を手に入れました。アメリカではパフォーマンスフットウェアカテゴリーのトップブランドとして、ナイキとアディダスに続いています。また、パリの高級ブランドであるCasablancaや日本のWTAPSなどのアパレルブランドとのコラボによって地域の市場にも参入しています。この巧みなコラボによって2023年までに70億ドルの売上高が見込まれています。
2. クリエイターとの連携
消費者は、単なる企業とではなく人とつながりたいと考えています。ほぼ3分の1の買い物客にとって、友だちや家族よりもインフルエンサーのおすすめがより重要であり、71%の企業はオンラインインフルエンサーが今後さらに重要になると考えています。*
お客様によって作成されたコンテンツはそれ以上に人を集める力があります。ユーザー発コンテンツはインフルエンサーのコンテンツと比べて8.7倍の影響力があります。レビュー、写真、動画、ブログ記事、コメント、共有、「いいね」はブランドが作成したコンテンツの3倍、公式インフルエンサーのコンテンツの約6倍の信ぴょう性があると考えられています。お客様はブランドの一部となっていると感じることを好み、35歳未満の成人の消費者の30~40%は、すでに自分自身をコンテンツクリエイターだとみなしています。
Z世代ユーザーを獲得するために、コラボレーターと提携する場所として、ショートビデオのプラットフォームが最も人気があります。40%のZ世代ユーザーは、GoogleをしのいでTikTokやInstagramを検索に使用し、61%がコロナ禍以降ユーザー発コンテンツによりいっそう影響を受けていると言っています。グッチは、SNSを通じてより若く広範囲のオーディエンスを引きつけるために大胆な方法をとっています。鉄道オタクでTikTokスターのFrancis Bourgeoisは、Gucci x The North Faceコレクションの最新の顔]として起用されています。このコラボレーションはSNSで大きな反響を呼んでいます。
3. ロイヤリティプログラムの見直し
体験主導型のお客様中心のロイヤリティプログラムはまだ一般的ではありませんが、数年以内には実現すると考えられます。ロイヤリティ技術提供事業者のAntavoによる調査によると、約72%のグローバルブランドがすでに既存のプログラムの改良を計画しています。トレンドを先取りするために、ブランド各社はお客様を取引ではなくロイヤリティプログラムの中心に据えています。
1つのストアだけでなく、ブランドのネットワーク内の至る所でお客様が特典を求めて買い物をするとき、顧客エンゲージメント、顧客満足度、顧客関連性は、著しく上昇します。
ブランドロイヤリティは経済危機により打撃を受けます。そのため、支出が減るとあらゆる業界でロイヤリティプログラムの導入が多く見られるようになります。パンデミック中に10社中6社の会社がお客様の継続的エンゲージメントに感謝するロイヤリティプログラムを実施しています。ただし、ロイヤリティプログラムの形式にはさまざまなものがあります。ブランドとお客様の関係の未来への道を切り開くと同時に、現在のお客様ニーズに見合ったモデルを選択することがこれまで以上に重要となっています。
Alex Danco Shopify ブロックチェーン&システムシンキング担当ディレクター別のブランドの愛用者を、オファーや限定ディスカウント、先行販売やコラボ商品への早期アクセスに招待するためにはどうしたらいいでしょうか?「そのマーチャントのファンだということを証明してください。そうすれば、私からも何かを差し上げます」といったように、お客様があるストアの商品を購入することによって、もう1つのストアから何か特典を得ることができるようにするという方法も驚くほど効果的です。
注目のマーチャント
インフルエンサーや他社ブランドを利用して成長を遂げたDoe Lashes
カリフォルニアを拠点とする普段使いの付けまつげブランドDoe Lashesは、CEO兼創業者のJason Wong氏によると「クリエイターの影響力によって同ブランドが確立された」ということです。同社が500ドルの設立資金で2019年に創業した際、同社の商品をインフルエンサーたちに贈り、実質的な費用ゼロで商品ができる限り多くの人々の目に触れるようにしました。
今日では、TikTokで3,600万のハッシュタグ表示数で注目を浴びています。オーガニックソーシャルとインフルエンサー経由の収益が全体の60%を占めており、事業は飛躍的な成長を遂げています。
当初はSNSマーケター2名が複数のツールにまたがるインフルエンサーとの関係を手作業で管理していました。今ではその処理の多くをShopify Collabsで自動化しています。
Shopify Collabsは手間を半減します。今では1日6時間で100人ではなく、200人ものインフルエンサーへの連絡を行うことができます。かつてスタッフはパートナーへの支払いにPayPalを使い、それからスプレッドシートで数値を更新する必要がありましたが、Shopify Collabsは単一のコマンドセンターとして機能するので、新しいクリエイターの発掘、クーポンコード作成、CRMソフトウェア内での成果の追跡、そしてクリエイターとのコミュニケーションと支払いなど、すべてここで行うことができます。
「時間の節約はお金の節約を意味します」と述べるWong氏は、「少人数のチームでより多くのことができるということが当社の最優先事項です」と続けました。
Jason Wong氏 Doe Lashes CEO兼創業者設立当初は、とにかく商品の露出を増やすことに専念しました。そして今は、コンバージョン率の向上と収益の追求に注力できるようになりました。
Shopifyがお手伝いできること
インフルエンサー経由でより多くの購入者にリーチする
無料でインストールできるShopify Collabsは、ブランドがクリエイターを採用したり、コラボレーションを行ったり、管理したりするのに役立つオールインワンのクリエイターマーケティングアプリです。クリエイターコミュニティへの応募者の確認、アフィリエイトリンクとコードの割り当て、パフォーマンス追跡、支払い送金など、これらすべてを管理画面から直接行えます。
購入する可能性が高い人に広告を表示する
コマースデータから得られる独自のインサイトを活用したShopify Audiencesは、デジタル広告用カスタムオーディエンスリストを提供することで、ストアを関連性の高い購入者とつなぎます。
- オーディエンスがいる場所でオーディエンスにリーチ:キャンペーンの目的がブランド認知度、購入の検討、販売のどれを促進する場合であっても、マーケティングファネル全体で購入者とつながることができます。Shopify Audiencesは、複数プラットフォームの統合により、MetaとGoogleの広告ネットワークでの広告キャンペーンをサポートします。
- あなたの商品を欲しがっている購入者の発掘:Shopify Audiencesは、マーチャントのためのオーディエンスネットワークで新規の購入者を見つけ出します。
- オーディエンスパフォーマンスに関する正確なレポートの提供:Shopifyでビジネスを運営すれば、Shopify Audiencesでオーディエンスリストから正確にコンバージョン発生源の特定と測定ができます。
マーケティングトレンドQ&A
Shopify Plusで同調するインフルエンサーとのコラボを実現させる方法をご覧ください。
1ステップだけですぐにトレンドサマリーをダウンロードできます
数百万ものShopifyのブランドからのデータを集約したShopify独自のレポートは、今後1年間においてビジネスが成長を促進していくために必要なツールとインサイトを提供します。
2023年コマーストレンド