商品やサービスを販売する際、取引先から領収書の発行が求められる場合があります。領収書は、金銭を受け取ったことを証明するために発行される書類で、会社形態の種類に関わらず、ルールに従って発行する必要があります。副業でも領収書の発行を求められることがあるため、起業家ではなくても基本的な知識を身につけておくことが大切です。
この記事では、領収書の書き方やルールを初心者でもよくわかるように解説しています。インボイス制度に対応した領収書の書き方も解説しますので、参考にしてください。
領収書とレシートの違い
領収書とレシートには、記載内容に違いがあります。いずれも商品に関する詳細、たとえば商品の金額や購入日などが記載されていますが、領収書には購入者が誰かを表す宛名が明記されています。
なお、領収書とレシート両方の発行を求められた場合は、一方のみを発行するのが望ましいです。どちらも同等の効力を持つため、重複して発行すると不正に利用されるリスクが生じます。
領収書の書き方と注意点
領収書の書き方には手書きと電子の2種類があります。いずれの場合も、下記の7項目を適切に記載する必要があります。
宛名
領収書には、宛名を必ず記載する必要があります。具体的な宛名がない領収書は、消費税法に基づく税額控除の要件を満たさず、無効とみなされる場合があります。そのため、購入者の正式名称ではない「上様」と記載したり、屋号であるネットショップ名や「株式会社」などを省略して書いたりするのも避けたほうが無難です。正式名称が宛名として記載されていれば、取引の正当性を客観的に証明することができます。
発行日
領収書に記載する日付は、実際に金銭の受け渡しが行われた日付を記入します。たとえば、商品を先に引き渡し、代金を後日受け取った場合、商品を引き渡した日付ではなく、代金を受け取った日を発行日として記載します。日付は西暦でも和暦でも問題ありませんが、取引先の都合に合わせて統一するのが望ましいです。
金額
領収書には金額を記載する必要があります。手書きの領収書を発行する際は、数字の3桁ごとに「,」を打ち、先頭に「¥」記号か「金」、末尾に「※」、「-」、「也」を付け加えて、後から数字を改ざんできないようにします。
領収書の金額の書き方:
- ¥10,000-
- ¥500,000※
- 金2,000,000円也 など
内訳
領収書の内訳は、取引内容を明確に示すために欠かせません。ただし、請求書などのほかの証拠書類があり、詳細が記されている場合は内訳の記載を省略できます。
内訳を記載すると、商品名や適用されている税率などが一目でわかるため、記載ミスによるトラブルを防ぎやすくなります。ただし、税率が異なる商品やサービスが含まれる場合、それぞれの金額や消費税額を区分して記載することが求められるため、注意が必要です。
但し書き
但し書きは、領収書において何の代金を受け取ったのかを具体的に記載する項目です。そのため、領収書の但し書きの書き方として「お品物代」や「お品代」などの曖昧な表現は避け、具体的な品目、たとえば「パソコン代として」などと記入する必要があります。軽減税率の対象商品が含まれる場合は、その旨も但し書きに明記します。
収入印紙
5万円以上の金銭取引があった場合、領収書に収入印紙を貼りつける必要があります。収入印紙とは、印紙税を納めるために課税文書に貼りつける紙片のことです。収入印紙を貼り忘れると、未納付の税額に対して約3倍の過怠税が課される可能性があります。
収入印紙は郵便局や一部のコンビニで購入でき、文書に貼りつけた後、割印を行うことで納税が完了します。なお、郵便切手に似た形状ですが、切手には「日本郵政」の記載があり、収入印紙として代用することは認められていないため、注意が必要です。
領収書に必要な収入印紙の金額
領収書に必要な収入印紙の金額は、受領した代金に応じて異なります。具体的な金額は、以下のように設定されています。
- 5万円以上100万円以下:200円
- 100万円を超え200万円以下:400円
- 200万円を超え300万円以下:600円
- 300万円を超え500万円以下:1,000円
- 500万円を超え1,000万円以下:2,000円
- 1,000万円を超え2,000万円以下:4,000円
- 2,000万円を超え3,000万円以下:6,000円
- 3,000万円を超え5,000万円以下:10,000円
- 5,000万円を超え1億円以下:20,000円
- 1億円を超え2億円以下:40,000円
- 2億円を超え3億円以下:60,000円
- 3億円を超え5億円以下:100,000円
- 5億円を超え10億円以下:150,000円
- 10億円を超えるもの:200,000円
- 受取金額の記載のないもの:200円
このように、金額が大きくなるほど印紙税も高額になります。受領した代金に対して適切な収入印紙を貼付しましょう。
発行者名
領収書には、発行者の名称を正確に記載する必要があります。住所や電話番号などは記載する義務はありませんが、慣習で記載することが多い傾向にあります。また、商習慣として発行者名が記載された印鑑を押すことも一般的になっているため、押印があると書類の信頼性が高まります。
インボイス制度対応の領収書
インボイス制度に対応した領収書には、通常の記載事項に加えて、上記の項目を追加で記載する必要があります。インボイス制度に対応した領収書の書き方の見本として、国税庁が公表している「消費税の仕入税額控除制度における適格請求書等保存方式に関するQ&A」から、以下の画像を紹介します。
見本:消費税の仕入税額控除制度における適格請求書等保存方式に関するQ&Aより
登録番号
インボイス制度に対応した領収書を発行するには、Tから始まる13桁の登録番号の記載が不可欠です。登録番号とは、適格請求書発行事業者として税務署に認められた事業者に与えられる番号です。登録番号の取得にあたっては、税務署に「適格請求書発行事業者の登録申請書」を提出する必要があります。すでに法人番号を持つ事業者の場合は「T+法人番号」が登録番号となります。
取引の内容
領収書には、どのような取引が行われたのかを具体的に記載することが求められます。軽減税率の対象となる品目が含まれている場合は、どの品目が軽減税率対象商品であるのかを明確にしなければなりません。
たとえば、上記の見本のように商品名の隣に「※」などの記号を記載する方法があります。その場合、領収書の欄外などを活用し、その記号が軽減税率の対象であることを明記する必要があります。
税率ごとに区分して合計した対価の額
領収書には、取引金額を税率ごとに分けて記載する必要があります。具体的には、軽減税率8%と標準税率10%に分けて、それぞれの合計金額(税込または税抜き)を記載します。
たとえば上記の見本の場合、軽減税率対象商品(コーヒー)の合計金額120円、標準税率対象商品(ボールペンとたばこ)の合計金額745円を記載しています。
税率ごとの消費税額および適用税率
領収書には、適用された税率ごとに消費税額を記載する必要があります。上記の見本を例にすると、軽減税率8%の商品(コーヒー)に対する消費税として9円、標準税率10%の商品(ボールペンとたばこ)に対する消費税として74円が記載されています。
なお、インボイス制度では税率ごとに端数処理を行ったうえで、それぞれの消費税額を合算することが必要です。つまり、商品ごとに端数処理を行い、消費税額の合計を算出することは認められていないということです。端数処理の際は、この点に注意しなければなりません。
領収書を発行するまでの流れ
領収書を発行する際の一般的な手順は、以下のとおりです。
- 金銭のやり取りを伴う取引を行い、領収書の発行を依頼される
- 宛名や発行日などの領収書に必要な項目を確認し記載する
- 5万円を超える領収書には金額に応じて収入印紙を貼る
- 取引先に領収書を渡す
- 領収書の控えを1部保管する
領収書を発行する前に、記載事項に誤りがないか最終確認するようにしましょう。
領収書の保存期間や保管方法
領収書は取引を証明するための書類で、保存義務があります。個人事業主では7年、法人では最長10年間の保管が求められます。感熱紙の領収書は経年劣化で文字が消える可能性があるため、コピーを取って保存することをおすすめします。
保管方法には、紙のほかに電子データで管理する手法もあります。なお、電子でやり取りした領収書に関しては電子データで保存することが法律で定められているため、注意が必要です。
まとめ
領収書は取引を証明するためのもので、事業者と取引先にとって重要な書類です。そのため、発行する際は正確な宛名や発行日、金額などの記載が求められます。特にインボイス制度に対応した領収書には、登録番号や税率ごとの消費税額など、詳細な情報が必要です。また、金額の改ざんを防ぐための工夫や、必要な場合は収入印紙の貼付も忘れてはなりません。さらに、領収書は原則7年間の保管が義務づけられているため、発行した後は控え適切に管理する必要があります。
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よくある質問
領収書に印鑑は必要?
領収書に印鑑を押すことは義務ではありません。したがって、発行者の印鑑がなくても領収書としての効力が失われることはありません。しかし、商習慣として押印するのが一般的になっているため、特に問題がなければ領収書の発行者欄には印鑑を押しておくのが望ましいでしょう。
なお、5万円を超える領収書の場合は収入印紙を貼りつける必要があり、その際は収入印紙への割印が必須となります。
クレジットカード支払いの場合、領収書の発行は必要?
クレジットカード支払いの場合、領収書の発行は必要ありません。クレジットカードでの支払いは代金を後払いする信用取引の一種であり、支払いを済ませた段階では金銭を受け取っていないと判断されるためです。
領収書の再発行を依頼されたら?
領収書には再発行の義務がないため、依頼されても断るのが望ましいです。安易に応じると、不正な経費計上や脱税に巻き込まれる可能性があります。再発行する場合、トラブルを避けるためにも、クレジットカード利用明細などの支払い証明書を提出してもらうか、再発行であることを明記するなどの対策を講じましょう。また、何度も再発行の依頼を受けないように、特例として今回だけと伝えることも重要です。なお、再発行の場合でも5万円を超える領収書には収入印紙が必要となります。
個人事業主の領収書の書き方は?
個人事業主が発行する領収書の書き方は、手書き・電子を問わず基本的に法人と同じです。必要事項を記載するのはもちろんのこと、商習慣に合わせて印鑑を押したり住所や電話番号を記載したりして、領収書の信用度を高めましょう。偽造防止のため、個人事業主であっても押印する際はインク内蔵タイプの簡易印鑑は避け、正式な印鑑を使用するのが望ましいです。
無料で使える領収書のテンプレートはある?
上記のサイトから無料で使える領収書のテンプレートをダウンロードできます。
文:Yukihiro Kawata