美容・健康意識の高まりとともに、サプリメントや健康食品の市場はゆるやかに拡大しています。矢野経済研究所によると、日本のサプリメント市場の市場規模は2024年には9,128億円に達する見込みです。
美容や健康への興味をビジネスにしたい人は、健康食品やサプリメントのオンライン販売に挑戦してみませんか。適切な卸売業者を見つけて商品を仕入れることができれば、サプリメントのECストアを運営することができます。さらに、卸売業者などのサプライヤーから購入者に商品を直接配送するドロップシッピングを活用すれば、在庫リスクをかかえずに、初期費用を抑えて始めることができます。この記事では、サプリメント・健康食品のネット販売を始めるのに必要な手順を解説し、ドロップシッピングに対応している卸売業者や、取り扱い可能な商品例などを紹介します。
サプリメント・健康食品の販売に必要な許可や資格
サプリメント・健康食品の販売に対しては、一般的な食品の販売と同様の許可および資格が必要になります。健康食品とサプリメントは、法律上の定義においては、あくまで「食品」として扱われているためです。
食品の販売には、食品衛生責任者資格か、それより上位の食品衛生管理者資格の資格を取得し、管轄の保健所へ営業許可の申請を行う必要があります。これが適用されるのは、あくまで販売のみの場合です。自社でサプリメント・健康食品を製造したい場合は、食品製造業の許可が必要になります。既製品を梱包し直して販売する場合も、同様に許可が必要です。
サプリメント・健康食品の販売にかかわる法律
食品衛生法
食品衛生法は、飲食による健康被害を防止することを目的とした法律です。2018年の改正により、健康食品で健康被害が発生した場合には、厚生労働省への被害情報の提出が義務付けられました。特に、厚生労働省が指定する成分を含む健康食品については注意が必要です。健康被害が発生した場合には、販売禁止や商品回収といった厳しい処分が下されることがあります。
また、海外からの輸入販売を考えている場合も、食品衛生法に基づく安全性の確認が必要です。全ての成分と添加物が日本の基準に適合しているかを確認し、必要な手続きを行うことが重要です。
まず、輸入したい製品の「原材料配合表」を入手し、各成分が厚生労働省の「医薬品リスト」と「非医薬品リスト」のどちらに該当するかを確認します。「非医薬品リスト」に載っていて、医薬品的な形状をしておらず、効能効果、用法容量をうたっていない場合は、食品に分類されます。リストに載っていない成分が含まれている場合や判断が難しい場合は、各都道府県の薬務担当部署に問い合わせて確認します。最後に「食品等輸入届出書」を厚生労働省検疫所に提出し、添加物の使用基準も確認した上で、はじめて輸入が可能になります。
食品表示法
食品表示法は、消費者が適切な情報に基づいて食品を選択できるように、食品の表示方法を定めたものです。健康食品のパッケージには、名称、原材料名、内容量、賞味期限、保存方法などの重要な情報を一括表示で明示することが義務付けられており、消費者に誤解を与えない表示が求められています。
薬機法
薬機法は、医薬品、医療機器、化粧品などの品質や安全性を確保するための法律です。健康食品についても、医薬品と誤認されないようにするための規制があります。
たとえば、医薬品ではない健康食品であるにもかかわらず、「〇〇に効く」「〇〇が治る」と販促物やパッケージに記載し、医薬品のような効果の誤認があると判断された場合、薬機法違反になります。また、カプセル状の商品は、ユーザーが医薬品と勘違いしないように、パッケージに「食品」であることを明確に記載する必要があります。注射器のアンプル剤や舌下錠、舌下に落とすような形は、健康食品では使えません。
他にも、サプリメント・健康食品については、医薬品と誤解されるような服用時期や服用間隔、服用量を定めることができない点に注意しましょう。
景品表示法
景品表示法は、事業者に対して、消費者に誤解を与えるような表示を禁止する法律です。一般消費者が自主的・合理的な選択をできるようにする目的があります。「絶対にやせる」「お茶碗3杯分のご飯の炭水化物をカット」など、うそや大げさな表現は不当な表示とみなされ、処罰の対象となる可能性があります。商品の効果を誇張することなく、実際の効果に基づいた正確な広告表現を行うことが求められます。
健康増進法
健康増進法は、国民の健康の向上を目的とし、虚偽・誇大な健康効果の表示を禁止する法律です。健康食品の広告や販促活動においても、実際の効果以上の健康効果を謳うことは禁止されています。景品表示法と異なり、こちらは販売事業者以外にも適用されるので、宣伝を第三者に依頼する場合にも注意が必要です。
サプリメント・健康食品のドロップシッピングの始め方
ドロップシッピングを活用すれば、卸やメーカーなどのサプライヤーが顧客の注文を処理して、発送を代行してくれます。在庫を管理する時間と労力を大きく軽減できるので、おすすめのビジネスモデルです。サプリメント・健康食品のドロップシッピングビジネスを始めるには、次の手順にしたがいましょう。
1. 商品のリサーチを行う
まずは、どういった商品が販売されているかをリサーチをします。Googleトレンドなどのツールを使用して人気のキーワードを探したり、SNSなどで人気商品のレビューを読んだりすることで、サプリメント・健康食品業界のトレンドを把握できます。
2. 商品を選び、卸売業者を探す
リサーチが終わったら、ターゲットを決めて、販売するサプリメント・健康食品を選びます。トレンドを参考にしたり、自分が使用して気に入っている商品を選んだりするのもいいですが、高い利益率を確保できるように選定しましょう。マルチビタミンのように、日常的に摂取するサプリメントは、リピート購入が期待できるので有利です。
信頼性の高い卸売業者を探すことも重要です。商品の品質はもちろんのこと、顧客サービスの質や、注文から納品までの早さなどについての評判も合わせて確認しておきましょう。
3. 資格を取得し、管轄の保健所へ営業許可を申請する
食品衛生責任者資格か食品衛生管理者資格を取得し、管轄の保健所へ営業許可を申請します。食品衛生責任者資格は、自治体が開催している食品衛生責任者養成講習会を受講することで取得できます。講習会は、17歳以上であれば誰でも受講することが可能です。資格を取得したら、管轄の保健所に営業許可を申請しましょう。
4. ブランドを構築する
ターゲットに合わせたブランド構築を行うことも重要です。ブランドのミッションや提供する価値を明確にして、他のブランドとの差別化をはかりましょう。
ブランドとして目指す方向性が明確になったら、ブランドガイドラインを作成します。ブランドガイドラインとは、自社のブランドイメージに一貫性を持たせるための指針やルールをまとめたものです。顧客とコミュニケーションするための文体や雰囲気、ロゴやブランドカラー、フォントといった見た目のデザインを決めましょう。ブランドガイドラインを作成することで、ユーザー向けのメッセージや広告で常に一貫したブランドイメージを保つことができます。
5. ECサイトを開設する
販売プラットフォームとして、ECサイトを立ち上げましょう。ShopifyなどのECサイト用CMSを利用すれば、専門知識がなくても、テンプレート(テーマ)を利用して、デザイン性の高い独自のECサイトを開設できます。ショッピングカートなど、ECに必要な機能がすべて揃っているので、ブランド構築とマーケティング、販売に集中できます。
商品ページでは、魅力的な製品画像を使用して、説得力のある商品説明を作成しましょう。商品のメリットや成分、製造工程などを示すことで、安心感を持ってもらうことができます。また、ユーザーからのフィードバックを受け取れるようにしましょう。ユーザーからのフィードバックは、商品ラインナップを改善したり、ユーザーが抱えている問題を把握・改善したりする上で、優れたカスタマーサービスを提供するのに役立ちます。
6. マーケティングする
オンラインストアへの訪問数を増やし、売上を伸ばすためには、効果的なマーケティング戦略を構築する必要があります。ターゲットに合った戦略を立てて、キャンペーンを展開しましょう。ニュースレターやメルマガ、ブログ、動画などを利用したコンテンツマーケティングが有効です。また、顧客のレビューなどのUGCは、信頼されやすい傾向にあります。
ただし、医薬品だと誤解させるような表現、景品表示法や健康増進法に反するような嘘や大げさな表現は避けてください。
サプリメント・健康食品を取り扱う卸売サイト
卸の達人
卸の達人はダイエット、美容、健康商品を中心に取り扱っているドロップシッピングサイトです。サプリメントや健康食品も幅広く揃えています。入会金や月額料がかからないため、初期費用を抑えたい方にもおすすめです。少量からの仕入れにも対応しており、初めての方でも気軽に利用できます。
卸売ドットコム
卸売ドットコムは、BtoB専用の仕入れ・卸売サイトです。サプリメント約260点、健康食品約50点を取り扱っています。筋力アップ用、ビタミン系、ミネラル系など、サイト内でのサプリメントのカテゴリも細かく分かれており、ニーズに合わせた仕入れが可能です。ドロップシッピングにも対応しています。
NETSEA
NETSEA(ネットシー)は、日本最大級の卸問屋サイトです。健康食品のカテゴリでは3,500点以上の商品の登録があります。ドロップシッピングの専門サイトではないため商品の販売方法はサプライヤーによって異なります。各サプライヤーとの交渉が必要な場合もありますが、その分独自の商品ラインナップを構築できる可能性があります。
NET de 卸
NET de (ネットデ)卸は日用品、化粧品を中心とした会員制のB2B仕入れサイトです。取扱商品の多くが高品質な国内生産であるため、安心して取引できます。健康食品・サプリメントにも50点の登録があり、ドロップシッピングにも対応しています。
TopSeller
TopSeller(トップセラー)はネットショップ専門の会員制卸売サイトです。サイトへの掲載商品数に上限があるショップ向けの「セレクトコース」、掲載商品数に上限がないショップ向けの「全商品コース」があり、自社ブランドに適したコースを選ぶことができます。商材の種類が非常に多く、健康食品・サプリメントの取り扱いもあります。
ツクツク!!!BtoB
ツクツク!!!BtoB(ビートゥービー)は、商品を仕入れたい人と卸の会社をつなぐBtoBマーケットプレイスです。健康食品のカテゴリに約90点の登録があり、ドロップシッピングに対応している商品も多数あります。サイト内でさまざまな業者を比較することが可能で、ビジネスモデルに応じて最適な仕入先を見つけることができます。
ドロップシッピングで販売できるサプリメント・健康食品の例
ビタミン類
日本で最も摂られているのがビタミン類のサプリです。食事から摂取しきれない栄養素を補う目的で、日常的に摂取している人がたくさんいます。また、美容に関心のある女性にも1番人気のサプリです。マルチビタミンのように複数のビタミンを組み合わせたサプリもあります。単体で販売されているものには、次のような種類があります。
- ビタミンC:美容に関心のある層に特に人気です。ビタミンCには抗酸化作用があり、肌のハリやツヤを保つコラーゲンの生成を促進します。また、免疫力を高めて、風邪の予防や回復を早める効果もあります。
- ビタミンD:骨の健康を維持するために欠かせないビタミンです。カルシウムの吸収を助け、骨密度を高める効果があります。日照時間が少ない冬季や日光にあまり当たらない生活をしている人に不足しがちで、サプリメントでの補給が推奨されています。
- ビタミンB1:体内でエネルギーを生成するために重要なビタミンです。ビタミンB1は糖質をエネルギーに変換する役割を果たし、疲労回復や神経機能の正常化を助けてくれます。体を使った仕事をする人やスポーツをする人、エネルギー消費が多い人におすすめです。
鉄
ネスレヘルスサイエンスの調査によると、美容に関心のある女性が摂取しているサプリ第2位が鉄です。体内で酸素を運ぶ役割を担う赤血球の主要成分であるヘモグロビンの構成要素として重要です。特に女性は生理などで鉄分を失いやすいため、貧血予防に日常的に摂取している人もいます。疲労感の軽減や免疫機能のサポートにも役立ちます。
コラーゲン
コラーゲンサプリメントは、美容に関心のある人に人気です。粉末やタブレット、ドリンクなどさまざまな形状で販売されています。
日本のコラーゲン市場は、年平均成長率6%という調査結果もあり、拡大し続けています。ネスレヘルスサイエンスの調査によると、美容に関心のある女性の摂取しているサプリの第3位にランクインしています。使用者の7割が「肌のたるみ、ハリのなさ」を気にして摂取しているそうです。
プロテイン
プロテインは、筋肉の維持・増強を目指す人々から人気です。日本のプロテイン市場の規模は、2017年から2022年の5年間で約2.7倍に跳ね上がり、現在も拡大傾向にあります。コロナ禍以降の筋トレブームはやや落ち着いてきたものの、2024年も筋トレやフィットネスはトレンドにあがっています。特に日本は「筋トレ」というキーワードでの検索数が世界1位です。プロテインの需要もまだまだ落ちないことが予想されます。
乳酸菌・プロバイオティクス・ポストバイオティクス
「菌活」「腸活」などの言葉が話題になっている中、腸内環境を整える効果が期待される乳酸菌や、それを使用したプロバイオティクス、ポストバイオティクスなどの商品の売れ行きが好調です。
富士経済が実施した調査によると、腸活関連の原材料を利用して製造された商品の市場は、2022年に1兆724億円に達しています。需要が安定していることから、今後も堅調に伸びることが予想されています。
まとめ
サプリメント・健康食品の販売は、健康や美容に興味のある人や、筋トレにはまっている人などに、おすすめのビジネスです。ドロップシッピングを活用することで、在庫リスクを抑えて手軽にスタートできます。ただし、サプリメント・健康食品の販売には、食品販売と同じ資格を取得し、許可を申請することが必要です。
市場リサーチを行い、適切な商品を選び、信頼できる卸売業者を見つけて、ビジネスを始めましょう。他のブランドと差別化するためには、ブランド構築やマーケティング戦略が重要です。法律に違反せず、消費者の信頼を得るためには、正確で誠実な広告表示が求められます。
よくある質問
サプリメント・健康食品の販売には許可が必要?
サプリメントや健康食品は、法律上の定義においては、あくまで「食品」として扱われているため、食品の販売を行うのと同様の資格と許可が必要です。食品の販売には、食品衛生責任者資格か、それより上位の食品衛生管理者資格の資格を取得し、管轄の保健所へ営業許可の申請を行ってください。
サプリメント・健康食品のドロップシッピングは可能?
可能です。信頼できるサプライヤーをみつけ、ECサイトを立ち上げることで始められます。
トクホって何?
健康に良い効果が期待できる食品として、消費者庁から特別に許可を受けた「特定保健用食品」です。たとえば、「お腹の調子を整える」「コレステロールを下げる」などの効果が科学的に証明されている食品が該当します。パッケージには「トクホ」のマークがついています。
一般的に、サプリメントなどの健康食品に法律上の定義はなく、機能をうたうことはできませんが、トクホは、一定の基準を満たしていることを消費者庁に届け出て、国に認可された食品です。
トクホの製品もECサイトで販売できる?
はい、食品の販売と同じ資格と許可を申請することで、トクホの製品もECサイトで販売することが可能です。
Shopifyでサプリメントをドロップシッピングできる?
はい、Shopifyでもドロップシッピングでサプリメントを販売できます。
文:Taeko Adachi