<目次>
- 実店舗でも自宅でも楽しめる食べるスープの専門店「Soup Stock Tokyo」
- 「お客様へサービスをしっかり届ける」こだわりの自社ECサイト
- ポイント連携の課題などを解消し、ECを進化させるため「Shopify Plus」を導入
- 実店舗とECサイトのポイント連携がシームレスに
- お客様の多様な注文に応える熨斗サービス
- 「選べるスープセット」購入ページのビジュアル強化と利便性向上を実現
- ECサイト事業の新たなキーワードは「ソーシャルギフト」と「BtoB」
1.実店舗でも自宅でも楽しめる食べるスープの専門店「Soup Stock Tokyo」
女性が気軽に1人で食べられるファストフード店の選択肢が少なかった1999年に1号店をオープンしたSoup Stock Tokyo。創業者である遠山正道氏の脳裏に「カウンターでひとり、スープをすすっている女性」が思い浮かんだことが、この事業を始めたきっかけだった。
「Soup for all」という価値観のもと、いつでも、誰にでも、おいしいスープをお届けすべく、手間隙をかけて素材本来のおいしさを引き出すことにこだわっている。
Soup Stock Tokyoは冷凍スープの販売を実店舗とECサイトで行っている。冷凍スープは「家庭でもSoup Stock Tokyoの味を楽しんでもらいたい」という思いから開発。現在は百貨店や大型スーパーへの卸販売も行っている。
2.「お客様へサービスをしっかり届ける」こだわりの自社ECサイト
自社のECサイトをスタートしたのは2018年。実店舗のない全国の地域でもSoup Stock Tokyoの味を楽しめるようにするのがその目的だ。開設当初の商品ラインナップは冷凍スープのみ。現在は冷凍カレー、レトルトカレー、フリーズドライスープ、離乳食、カップやスプーンなどの食器、魔法瓶のような雑貨まで展開している。
Soup Stock TokyoのECビジネスは、「Yahoo!ショッピング」「楽天市場」への出店でスタートした。その後、満を持して自社ECサイトを開設したが、そこには強い思いがあった。
まず「Yahoo!ショッピング」と「楽天市場」から始めたのは、各モールに出店する方が手間をかけずスピーディにECビジネスを始めることができるからです。しかし、ECモールはどうしても制限があるため「ECモールだけで自分たちのサービスをきちんと届けられるのか」と考えることがあり、自社ECサイトを立ち上げることになりました。(伊藤彰信氏)
Soup Stock Tokyoが自社ECサイトでどうしても実現したかったことは、販売ページのUI(ユーザーインターフェイス)・UX(ユーザーエクスペリエンス)の向上だ。
具体的にはお客様が好きな冷凍スープの味を自由に詰め合わせできる「選べるスープセット」ページの改修である。
人気商品である「選べるスープセット」を買いやすくするため、自社ECサイトではビジュアル面をリニューアルしてスープのイメージをわかりやすく表現。ECモールでは選んだ商品をテキストでしか表示できなかったが、自社ECではスープをクリックまたはタップすると画像と説明テキストがポップアップするようにした。
もう1つ、自社ECサイトで利便性を高めたかった点は熨斗(のし)のサービスだ。現在ECサイトの売り上げの約7割がギフト目的で、お中元やお歳暮、お見舞いなど熨斗を必要とする利用が多かった。
メイン利用の年齢層が30代~50代と実店舗よりも高いこともあり、「熨斗の名入れに対応してほしい」「連名でも贈りたい」といった要望が多く寄せられた。お客様の声に応えるにあたり、モールではすべて手動で入力していたものを、自社ECサイトではシステム化した。
3.ポイント連携の課題などを解消し、ECを進化させるため「Shopify Plus」を導入
ECモールとの差別化を図り、Soup Stock Tokyoの魅力を伝える為に開設した自社ECサイトだが、より利便性の高いサイトをめざしたため、2022年4月にリニューアルした。
リニューアル以前は、Soup Stock Tokyoの実店舗とECサイトで顧客のデータベースが別々だったため、アカウントが分かれていた。そのため、後述するポイント連携において、利便性が悪いという課題を抱えていた。また、ECシステムの老朽化もあり、こうした状況を解決できるのがShopifyの最上位プランである「Shopify Plus」だった。
「Shopify Plus」のシングルサインオン機能を活用することで、お客様はSoup Stock Tokyoの会員情報を維持したままECサイトへのログインが可能になった。また、リニューアル前より高アクセスに耐えうるようにもなったという。
さらに「Shopify Plus」に移行することで安全性が向上。セキュリティ面の強化と保守コストの削減にもつながった。もちろん熨斗のサービスは維持・継続でき、こだわっていた「選べるスープセット」購入ページのビジュアルはさらにグレードアップした。
ただ、「Shopify Plus」導入は一筋縄ではいかなかった。Shopifyによると、実店舗での購入とECでの購入をシームレスにつなぐ事例はそれまでなかったからだ。
また、ポイント連携でも重要だった、Soup Stock Tokyoの実店舗で利用している会員データベースとECサイトのデータベースの統合も困難を極めた。実店舗側のデータベースと、EC側のデータベースの形式が異なっているため、どのように落とし込んでいくかが課題だったのだ。さらに、Shopifyと実店舗とで取得できる会員情報にも違いがあり、これらを整理し、データの持たせ方をどうするか、といった点の整理も難航したという。
これらの整理および解決は、「Shopify Plus Plartner / Shopify Expert」である株式会社R6Bの協力を得て進めていった。
4.実店舗とECサイトのポイント連携がシームレスに
ここからは「Shopify Plus」で構築したECサイトの現状を紹介していく。まず実店舗とECサイトのポイント連携だ。
Soup Stock Tokyoの実店舗とECサイトそれぞれで、お客様は連携を意識せず簡単に利用できるのがベストだ。しかし「Shopify Plus」導入前は、お客様自身でポイントを連携しなければならなかった。これは、店舗とECのデータベースの連携処理をどうしても挟む必要があったからだ。
そのためお客様から「わかりにくい」「ポイント連携ができない」などの問い合わせが届き、そのサポートコストも問題になっていた。
リニューアルでその状況は改善。店舗とECサイトのアカウントデータが統合され、実店舗とECサイトそれぞれで取得したポイントを連携できるようになった。
なお、Shopifyにはポイントを使用する仕組みがないため、貯めたポイントをShopifyで使う場合はポイントをクーポンに変換して使用する方法を勧めている(ECサイトで取得したポイントはそのまま実店舗で使用可能)。
前述の通りポイント連携にかかわるデータベースの統合は大きなハードルだった。だが、Soup Stock Tokyoにとって実店舗とECサイトのポイント連携は、重要な顧客体験であり、どうしても必要な実装だった。
5. お客様の多様な注文に応える熨斗サービス
自社ECサイトを始めるきっかけの1つでもある熨斗のサービスは、「Shopify Plus」を導入後も従前と同レベルのクオリティを維持している。
Soup Stock TokyoがECサイト運営で気付いたのは、お中元やお歳暮などのギフト需要は想像以上に多いということ。そこで多くの要望があったのが熨斗の名入れだった。テキストの追記や連名といった多様なお客様の注文に応えるこのサービスは、最初に立ち上げた自社ECサイトから実装はしていた。
しかし、リニューアルにあたってさまざまな熨斗を選択するシステムの実装は容易ではなかった。Shopify側で取得した熨斗のデータを、OMS(受注管理システム)で注文情報と同期するといった処理が難しかったからだ。このシステムは既存のShopifyアプリでは実装できないため、独自にシステムを構築する必要があり、最終的にはShopifyのエンジニアの協力を得て完成させた。
6. 選べるスープセット」購入ページのビジュアル強化と利便性向上を実現
人気の高い「選べるスープセット」のページは、「Shopify Plus」導入前よりわかりやすく、購入しやすいことをめざした。スープのバリエーションが整然と並び、それぞれのスープをクリックすると説明文入りの大きな画像がポップアップする。選んだスープの個数を決定すると画面下部に選んだスープの画像を表示する仕様だ。これならば選択した商品を間違いにくい。
「Shopify Plus」導入前のECサイトでは、スープを選択する度に候補商品をすべて表示する画面に戻り、そのなかから選ぶ仕様だった。たとえばこれが「選べる8スープセット」であれば、8回同じ作業を繰り返す必要があったのだ。
この「選べるスープセット」購入ページの改修という課題は、株式会社R6Bの技術力の高さによって解決した。
7. ECサイト事業の新たなキーワードは「ソーシャルギフト」と「BtoB 」
Soup Stock TokyoのECサイトはギフト需要が多い。しかし、ギフトの売り上げで高い割合を占めていたお歳暮・お中元での利用について、伊藤氏は「減少傾向にある」と感じている。
これからSoup Stock TokyoがECサイトで注力していきたいことの1つ目はソーシャルギフトだ。
もっとカジュアルなギフト、いわゆるソーシャルギフトでも利用してほしい。これが実現できると、実店舗のお客様とECサイトの親和性がさらに高まってくると思います。既にオンラインギフトサービスの「giftee(ギフティ)」に商品を掲載していますが、まだ露出が少ない状況です。今ある需要に応えつつ、ゆくゆくは自社ECサイトでもソーシャルギフトを実現して、より気軽に利用していただけるようにしたい。(伊藤氏)
2つ目は法人向け事業の実現だ。これは企業から興味深い要望を受けてのことだった。
減っているとはいえ企業が「お歳暮で複数の取引先に送りたい」というニーズはまだあります。また、コロナ禍で社員が自宅などでリモート勤務となったケースが増えていて、「社員に特別な慰労として送りたい」というご注文を何度かいただいています。これは今まで聞いたことがなかった。
法人向けの対応はまだアナログです。送る相手の名前や住所などの情報をExcelのようなものに入力していただき、それをOMSに直接取り込んで出荷しています。(伊藤氏)
ソーシャルギフトや、法人向け事業、コロナ禍の福利厚生という時代のニーズをとらえて、新たなサービスを見据えている。これらの見据える未来も、Soup Stock TokyoはShopifyのもつ拡張性や柔軟性を活かし、時代に合った、よりお客様に寄り添ったEC体験をデザインし、進化を続ける。
【関連リンク】
・Soup Stock Tokyo:https://ec.soup-stock-tokyo.com/
・Shopify:https://lanxiaowei.shop/jp
・Shopify Plus:https://lanxiaowei.shop/jp/plus
・株式会社R6B:https://r6b.jp/