FIRE KIDSは、1995年に横浜の白楽で創業した、横浜エリアでは店頭在庫数No.1を誇るヴィンテージ時計専門店。「高品質で永く使えるヴィンテージ時計をお届けしたい」という想いで、主に1920年代から2000年頃のヴィンテージ時計を専門に取り扱っている。2022年3月の事業継承を契機にShopifyを使ったECサイトを開設。リアル店舗では関東圏の顧客が多かったが、ECサイトでは全国にいる顧客が対象となり、リアル店舗とECサイトの両輪効果で月商12倍と急成長を遂げた。
基幹ソフトとしてShopifyを導入した経緯、急成長の秘密や今後の展望をFIRE KIDS店長の野村 一成氏とECサイトの制作を担当したRFA digital brains 代表取締役、領家(りょうけ) 航氏を取材した。
FIRE KIDS
横浜本店/中野ブロードウェイ店
店長 野村 一成氏
RFA digital brains
代表取締役 領家 航氏
1. FIRE KIDSとは
2. ヴィンテージ時計を購入するメリットとは
3.「店舗の世界観を伝えたい」自社ECサイトでの販売に進出
4. ECサイトでなぜ「Shopify 」を選んだのか
5. Shopify のココがすごい
6. リアル店舗とECのいい関係とは
7. 将来のFIRE KIDSのECサイトはどうなる?
1. FIRE KIDSとは
――1995年に創業した横浜本店と、2023年3月に2号店としてオープンした中野ブロードウェイ店、自社ECサイトを展開するFIRE KIDS。海外・国内で展開する50以上のブランドの1920年代〜2000年頃のヴィンテージ時計約600本を取り扱っている。統括する野村一成店長は長らくヴィンテージ時計業界に身を置いてきたが、ある日、転機が訪れる。
野村氏「FIRE KIDSは創業者の鈴木が四半世紀以上に渡り、オーナー様の“1点ものとの出会い”をお手伝いして参りました。お客様は横浜本店に来て頂ける横浜を中心にした関東エリアの方々でした。2022年に事業承継がおこなわれ、鈴木が顧問に退き、私が二代目店長に就任して新体制を発足しました。そこから自社ECサイトを開設することで、FIRE KIDSの世界観を日本中のヴィンテージ時計ファンに知ってもらいたいと思うようになりました」
2. ヴィンテージ時計を購入するメリットとは
――機械式時計を新品で購入できる人が、あえて、ヴィンテージ時計を購入するメリットを教えてください。
野村氏「ヴィンテージ時計の魅力は大きく3つあると考えています。1つは『リーズナブルなこと』です。新品に比べ、価格が手が届きやすく、メンテンナンスなどの維持費も安いことです。2つ目は『全部が1点もの』だということ。自分好みの経年変化(エイジング)した1点ものを探し出し、見つける喜びがあります。3つ目は『ロマンがあるということ』。自分が生まれた年や記念の年など、運命の年に誕生した時計に出会える喜びがあります。また、機械式時計のブランドは長い歴史の中で統廃合されたものも多く、現在新品の販売がされていない統合前のブランドの時計と出会えたり、時計そのものに歴史を感じたりすることにロマンがあります。機械式時計には使い捨てという概念はなく、一生使うものだと考えた時に、価格が高いからいいのではなくて「この時計のここが好き」と言えるのは楽しいじゃないですか。そんな楽しみ方や時計の愛し方ができるのがメリットだと思いますし、まさに時計を楽しむことを最優先とするFIRE KIDSの世界観です」
3.「店舗の世界観を伝えたい」自社ECサイトでの販売に進出
――自社でECサイトを作り始めた時のことを教えてください。
野村氏「2022年にECサイトを開設する前からWEBサイトはありましたが、売るためのものではなく、たまに『商品を入荷しました』というお知らせを掲載するためのサイトで、売上割合は店舗販売が100%でした。店舗の商圏として、半径10-20km位に住むお客様にしかアプローチできていないのではないか、と考えた時に、これまでの商圏を超えて、日本中の本当に時計好きな方々と繋がることができるECサイトを作りたいと考え始めました」
――ECサイトの制作会社担当者として、野村店長とタッグを組んだRFA digital brainsですが、制作のお話を受けて現在のECサイトに繋がるアイディアはあったのでしょうか。 写真も非常にクオリティーが高いですね。
領家氏「そうですね。ヴィンテージ時計は単価が高く、通販で販売するのは難しいですが、今は自動車がネットで凄く売れていて、電気自動車がAmazonでの販売を開始しているような時代です。そのような環境の変化も後押しし、ぜひやってみたいと思いました。横浜本店を訪問してお店の様子を見せてもらった時に感じたのは、『売上至上主義』ではなく、『本当の時計好きが集まるサロンのようなお店』という印象でした。ECサイトも売るためだけではなく、FIRE KIDSの世界観や店舗の雰囲気を伝えるためのデザインに注力しました」
野村氏「写真には力を入れています。ECサイトでは、白背景の商品写真が多いと思うのですが、FIRE KIDSでは使用シーンをイメージしやすいよう撮影背景にもこだわりを持っており、全体の写真クオリティが圧倒的に高いです。2023年5月には数々の一流時計ブランドの公式写真や、世界的ラグジュアリー誌の撮影など、第一線で活躍するフォトグラファー・笹口悦民氏プロデュースの腕時計撮影用の自社スタジオも開設しました」
4.ECサイトでなぜ「Shopify 」を選んだのか
――FIRE KIDSのECサイトはShopifyで作られています。数あるECプラットフォームの中で、なぜShopifyを採用したのでしょうか。
領家氏「そうですね。まず、ECサイトのオープン日が先に決まっていて、スケジュール的にオリジナルでゼロから作る余裕はありませんでした。ゼロからだと予算も制作期間も膨大にかかります。世界で一番使われているShopifyのコマースプラットフォームでサイトを構築するのが、スケジュール的にもコスト的にも、パフォーマンスがいいという判断をしました。ECサイトに必要な機能は全て入っているので、後はデザインの部分で店舗の雰囲気を再現することができるかが勝負でした」
――導入にあたり、他のプラットフォームと比較しましたか。
領家氏「はい。他にも採用事例の多いプラットフォームはありましたが、Shopifyの魅力は裏側の分析面です。個人商店で小さくやる通販であればShopify以外のカートシステムでもいいのですが、今回のECサイトは1つのビジネスの柱でもあるので、マーケティング目線での分析機能が充実しているShopifyが魅力的でした。販売する商品数も最初からかなりの数があったので、ベーシックプランではなくて、最初からスタンダードプランで提案しました。現在はプレミアムプランを契約しています」
5.Shopify のココがすごい
――高額なヴィンテージ時計のECサイトでの取引ですが、詐欺被害などのリスクはありませんか。
野村氏「時計販売店における詐欺被害はクレジットカードの不正利用によるものがほとんどです。しかしShopifyにはアラート機能があり、過去の犯罪と類似の行動を検出したり、無作為なパスワードの複数回入力を察知した場合に、Shopifyが持つビッグデータによって「この人、怪しいですよ」というアラートが出ます。その場合はすぐに電話で確認といった対応ができるので大変助かっていますね」
――Shopifyを業務管理に使っていると聞きました。
野村氏「ECの基幹システムとして使用しつつ、リアル店舗を含む商品の在庫管理や経理に繋げる仕組みを構築し、業務管理システムとしても活用しています。顧客管理、修理品の管理、販売の管理、売上管理、全てShopifyのシステムで完結しています。小売店は、ECサイトとは別に業務管理システムを導入することが多いのですが、当社はShopifyのみで業務管理を網羅できています。スモールビジネスの事業者だと、これ1本あれば全て解決するのではないでしょうか」
6.リアル店舗とECサイトのいい関係とは
――2022年3月にECサイトを開設してからたった1年半で月商が12倍になったと聞きました。
野村氏「忙しくなりましたね。そのうち、ECサイトでの売上は20〜30%くらいなのですが、『ECサイトのこの時計を実際に見たい』と、ECサイトを見て既に購入することを決めたお客様が店舗で自分の目で見てから購入するというパターンも多いのです。なので、実質的にECサイトで売り上げの半分位があると感じています。リアル店舗の世界観を店舗の商圏の外まで伝えることができているのではないでしょうか。店舗とECサイトが上手く補完しあっていると思います。売上が12倍になってもシステム的な問題は全く発生していないのでShopifyのシステムには感謝しています」
7.将来のFIRE KIDSのECサイトはどうなる?
――サイト開設から約1年半で月商12倍を達成したFIRE KIDS。さらなる成長が期待されますが、現在、運用中のECサイトについて思うこと、今後の展開について教えてください。
領家氏「ヴィンテージ時計の通販なので、どこか懐かしさを感じるけれども古くさく見えないような絶妙なデザインにこだわりました。ただ、今のデザインも完成形とは思っていなくて、まだ実店舗の良さを伝えきれていないという課題はあるので、より良くしていきたいなと思っています。いかにFIRE KIDSというブランドを体現できるECサイトにできるか。スタート時点では70点と評価していますが、そこからトライアンドエラーを繰り返しながらアップデートしていくのに、Shopifyはすごく最適なプラットフォームでした。実は、現在のECサイトと1年半前の開設時のサイトのデザインはかなり変化しています。開設当初から絶えずこだわっていることは、店舗の体験と同じことをECサイトでも体験していただくことです。リアル店舗だと『これはですね〜』とスタッフが説明してくれる動機付けがあるじゃないですか。ECサイトにはそれがないので、店長が説明する動画を撮影して、ECサイト上でレコメンドすると面白そうだなと考えています」
野村氏「当社は創業以来「お客様にいかに楽しんでいただくか」をコンセプトに事業をおこなってきました。当社では、時計を売るのではなく、お客様に最良の時計体験をお届けし、とにかく楽しんでもらうことにフォーカスしています。店舗に足を運んでいただくお客様にも、ECサイトにお越しいただくお客様にも、常に楽しんでいただけるお店作りをこれからも目指していきたいです」