予約販売は、製品の需要を事前に把握し適切な在庫を準備できる点で多くのビジネスにとって魅力的です。この記事では、ネットショップに予約販売を取り入れるメリットとデメリット、Shopifyで予約販売を設定する方法や役立つ予約販売アプリをご紹介します。これから新商品の販売を考えている方や、新しいサービスのリリース予定がある方は是非ご覧ください。
予約販売とは?
予約販売とは、まだ発売されていない、もしくは現時点において在庫のない商品やサービスの注文を事前に受け付け、販売日に購入者に送る販売方法です。デジタルコンテンツや小売商品、アパレルなどさまざまな業界で活用されています。受注数しか作らない完全受注生産とは違い、予約を開始する時点ですでにある程度商品やサービスの製作が始まっており、予約販売分と通常販売分が分けられているのが特徴です。人気の度合いによって生産数を増減させたい場合や、プロモーションを早めに行って商品を周知させたい場合などに利用されています。
予約販売のメリットとデメリット
予約販売を導入するメリット
売り上げの予測と調整ができる
予約販売を行うことである程度の販売数が事前に把握できるので、在庫不足や余剰在庫を未然に防ぐことができます。また、予約数から通常商品の販売数のめども立つため、全体の売り上げもある程度予測することができるほか、売れ筋商品の在庫数を増やすなど調整することもできます。
例えばアパレルの場合、同じ商品でも色やサイズによって予約数が異なる場合、通常販売の商品数も人気のある商品に合わせて調整することができるでしょう。売り上げや需要の見通しが立つことで、製造やマーケティングの予算を効率的に利用できます。
在庫切れによる機会損失を避けられる
顧客がネットショップを訪問したタイミングで在庫がなかったとしても、予約を受け付けることで機会損失を防ぐことができます。また、予約状況を見てから追加発注することができるため、人気商品のピークを見誤り余剰在庫を作ってしまうリスクも減らすことができます。
例えば、商品が在庫切れになってしまった場合、追加生産が決定したタイミングで予約を開始すれば、予約状況や市場の需要に合わせて生産数を調整し、最適な数で再販売を開始できるでしょう。
販売開始に合わせた業務調整ができる
予約販売で全体の数を予測できるので、それに合わせて業務調整を行うこともできます。発売前までで予約を締め切り、発売日は発送業務だけに集中できるようにするなど、複数の作業が同時期に重ならないようにして人的ミスを削減したり、繁忙期のオーバーワークを避けたりできます。
例えば、お正月飾りなど繁忙期が一点に集中するようなイベント商品などは、予約数でおおまかな生産数が予測できたら早めに作成し発送準備をしておくことで、業務の分散や休業日の捻出が可能になります。
顧客の購入意欲を上げることができる
予約販売を行うことで、顧客に人気商品のイメージや在庫がすぐなくなるかもしれないという焦燥感を与え、購入意欲を刺激することができます。また、予約限定アイテムや予約販売限定のパッケージなどの特典をつけることで、お得感から予約を促すことができるでしょう。
例えば、新作ゲームの予約販売では、先行予約で限定アイテムを付与したり、予約特典でお店のポイントを追加したりすることで顧客の購買意欲を高めています。
予約販売を導入するデメリット
トラブルから顧客の信頼を失う可能性がある
実際の商品がそろっていない状態で購入受付をする予約販売では、製造元都合で在庫を予約数分準備できない、やむを得ない材料変更により予約時のイメージ写真と異なる仕様になってしまうなどのトラブルが起こり得ます。顧客は予約した商品は担保されていると考えるため、発売日になっても商品が届けられなかったり、予約時のイメージと違うものが届いたりすると、不信感を覚えるだけでなく支払いをめぐるトラブルに発展してしまう可能性があります。この場合、顧客によるネガティブな口コミによって他の潜在顧客にも悪い印象を与え売り上げが減少したり、ブランドや企業全体の信頼を失ったりする可能性もあります。
予約商品は、通常販売よりも注意深く生産管理や販売を進める必要があります。
キャンセル数が多くなる可能性がある
予約販売では、予約から決済までのタイミングが長い場合、支払い義務が発生していないことからキャンセルのリスクが高くなる傾向にあります。キャンセル数が増えると、余剰在庫が増えてしまう可能性があり、例えばアパレル商品では、キャンセル状況によっては商品のサイズ展開に偏りが出て在庫処分が必要になるかもしれません。
予約販売を行う場合は、予約商品のキャンセル率もある程度予測して在庫の準備を行うと良いでしょう。
予約数によってバックヤードの負担が増加する
予約数が多くなると、通常業務に加えて、予約商品用の在庫管理や発送準備、顧客管理などの業務が増え、バックヤードの負担が増加します。発送するまでに商品を保管するスペースや倉庫、人的コストや時間が多く取られるだけでなく、負担増加によるミスが発生するリスクも高まります。
人員や時間、保管スペースなどから予約数の上限を設定するなど、予約販売時にはバックヤードの負担や環境整備なども考慮するようにしましょう。
支払いトラブルの可能性が高まる
予約販売では、支払いと商品を届けるタイミングに開きがあるため、支払いトラブルが生じる可能性が高まります。クレジットカードの場合、予約時には有効だったカードの期限が切れてしまったり、カードを解約してしまったりすることで決済できない可能性があるため、そのような場合の対応はどうなるのか、決済会社に確認しておきましょう。顧客にも決済のタイミングを知らせたり、キャンセルポリシーを周知したりするなどの対策を行うと良いでしょう。代引きの場合は、顧客側の都合で受け取りを拒否され、配送や返送費用を販売側が負担しなければならなくなる可能性があります。発送前に顧客に確認のメールを送る、予約商品は代引き不可とするなどの対策を取ると良いでしょう。
なお、商品発送前には商品代金の請求ができない決済会社もあるため、利用する決済会社の要件を確認しておくことも大切です。
Shopifyで予約販売を設定する方法
Shopifyで予約注文を受け付けるには、App Storeから予約販売アプリをインストールし、管理画面で予約販売の設定を行います。予約注文用に商品登録するには、インストールしたアプリで設定が必要です。
予約販売アプリの設定は、主に以下の手順で行います。
- 予約販売アプリをダウンロード
- 管理画面からアプリの初期設定を行う
- アプリ上で予約販売ルールの設定や商品登録をする
どのアプリも、基本的に初めての方でもわかりやすい作りになっています。アプリの詳しい設定方法や使用方法については各アプリの説明を参考にしてください。また、Shopifyテーマの中にははじめから予約販売機能がついたものもあります。これからネットショップを立ち上げる場合はそういったテーマから選ぶのもおすすめです。
Shopifyの予約販売アプリ
Shopifyの予約販売アプリは複数ありますが、その中から利用者数が多いものや評価が高いものを3つ紹介します。
プレオーダー
プレオーダーはルーマニアに本社を置くTimesactが開発した予約販売アプリで、Shopify Appで多くの高評価を得ています。基本的な予約販売の機能に加えて予約注文メールや再入荷アラートなどを兼ね備えています。制限なしの利用でも毎月$17で使用でき、無料のプランもあるため、Shopifyで無在庫販売の導入を検討しているショップや予約販売数に限りがあるショップなども、低コストで試験的に予約注文を受け付けることができます。アプリの操作は多くの言語に対応しているので、多国籍な環境で使用予定があれば特に実用性が高いでしょう。
- 制限あり 無料または$1/月
- 無制限 $17/月(または$168/年)
シンプル予約販売
シンプル予約販売は、福岡県にある株式会社UnReactが開発した日本製のアプリです。その名の通り、シンプルな設計であるため初心者でも簡単に操作でき、日本語による導入サポートがあるので言語の心配もいりません。予約販売開始前、予約販売中、予約販売終了時など予約ステータスに合わせた表示の設定や、予約商品が購入された際の自動タグ付け、複数商品の予約販売、ノーコードでのボタン表示などが特徴です。月額費用も低く抑えられているため、初めての予約販売で日本語サポートが欲しい場合はまずこちらをダウンロードしてみましょう。
- Basic Plan $9.99/月(インストール日から7日間は無料でアプリを使用可能)
RuffRuff予約販売
RuffRuff予約販売は、鹿児島県にある株式会社Tsunが開発した日本語対応の予約販売アプリです。予約販売に関する基本的な機能だけでなく、期間限定販売やVIP会員限定販売、先行割引そしてブラックリスト会員への販売制限など、販売に関するさまざまな機能が搭載されています。また、プロプランの契約をすれば、販売手数料0%で商品の売り上げをそのまま利益として受け取ることが可能です。年間契約による割引もあるので、予約販売を本格的に行いたい方におすすめのアプリです。
- スターター $9/月(予約販売手数料:3%)
- ベーシック $52/月(予約販売手数料:1%)
- プロ $199/月、または$1,990/年(予約販売手数料:なし)
予約販売を成功させるポイント
さまざまな視点が伝わる映像や画像を準備する
予約販売の時点で商品のイメージがしっかりと伝わるように、さまざまな角度から撮影した動画や画像を掲載するようにしましょう。サイズ感や雰囲気などを予約販売の時点で視覚的に伝えることで、顧客に実際の使用をイメージしてもらえるので、利益につながりやすくなります。
例えば、家具の場合は大きさが伝わる画像に加えて、部屋に置いたときの雰囲気が伝わるような写真を載せることで、顧客が自身の部屋と比較しながら検討できるようになります。アパレル撮影の場合は、着用して座っている様子など動きのある写真を撮影し載せることで、服の伸びやしわの入り方、着用感が細かく伝わるでしょう。画像編集なども行って質の高い画像や映像を準備しましょう。
興味をひく予約特典をつける
予約限定のアイテムや割引などの特典をつけるのも効果的です。予約限定の特典をつけることで顧客の興味をひくことができるだけでなく、予約がキャンセルされるのを防ぐこともできます。また、ショップの他の商品に使える割引を付与したり、予約販売商品に関連する消耗品などを特典にしたりすることで、さらなる購入につなげることもできます。
例えば鍋を予約販売するのであれば、自社サイトで販売している使い捨ての落とし蓋を予約特典としてつけることで、お得感や利便性をアピールして予約を促すだけでなく、その後同じ落とし蓋を購入してもらえるようになるかもしれません。
有料広告を活用する
予算はかかりますが、有料広告を使用することも検討してみましょう。有料広告を使用すれば対象や公開地域を設定できるため、適切なターゲット顧客に対してピンポイントでアプローチすることが可能になります。例えば、Instagram広告などのSNSの有料広告を利用することで、アルゴリズムをベースにターゲット層にリーチすることができます。ウェブサイトの広告掲載であれば、掲載地域を限定できるので、気象や県民性を考慮したマーケティングも行えます。例えば、保温系のアイテムを販売したいのであれば、北海道や東北地方などの寒い地方に限定して広告を掲載することで効率的に予約販売商品の宣伝ができるでしょう。
ファンコミュニティと交流する
新商品などに強い興味を持つファンコミュニティと交流しておくことで、企業やブランドへのロイヤリティが高まり、予約販売の告知を行う際にも注目してもらいやすくなります。
例えば、定期的なメルマガの配信やSNSを活用したアンケートなど普段から交流しておくことで、コミュニティの企業やブランドに対する信頼感や親近感を上げ、予約販売の情報への注目度も高めることができます。また、普段のコミュニケーションからロイヤリティが高まっているファンが情報を拡散してくれるため、似たペルソナをもつ潜在顧客にもリーチしやすくなり、予約販売の注目度や受注数をさらに増やすことができるでしょう。
インフルエンサーマーケティングを利用する
インフルエンサーマーケティングを利用することで、知名度を利用して広く宣伝できるだけでなく、効率的にターゲット顧客の関心を集めることができます。予約販売前にインフルエンサーに商品を提供し、使用感やおすすめポイントを宣伝してもらいましょう。インフルエンサーが商品の魅力を伝えることで、効果的に拡散できるだけでなく、「この人が紹介している商品なら使ってみたい」とそのファンやフォロワーに興味を持ってもらうことができます。
予約販売の種類
即払い式の予約販売
予約販売において最も一般的なのは、通常販売と同じ即払い式です。商品発送前に支払いが完了するためキャンセル率が低く、売上予測が立てやすいことがメリットです。一方で、カート内で通常注文と予約注文が混同するため、配送費の計算が複雑になり顧客からの問い合わせなどが増える可能性があります。また、支払いが完了していることから、発送の大幅な遅延や商品の不備が発生するとブランドや企業の信頼を失いやすいというデメリットもあります。トラブルのあった顧客に対応する必要もあり、予期せぬコストが発生する可能性もあります。そのため、即払い式で予約販売を行う場合は、自然災害などの合理的な理由がない限り、商品の確保や発送などを優先的に行うようにしましょう。
後払い式の予約販売
後払い式の予約販売は、商品予約時は支払いをせず、販売開始時などに支払いを行います。販売開始日に顧客に支払いリンクが送信され、オンラインで支払い手続きを完了させる流れが一般的です。予約の後に支払いが発生するため顧客の購入予算への影響が少なく、通常商品の売り上げに影響を与えにくいというメリットがあります。また、支払い前であることから、製造トラブルなどで商品の製造に遅れが出ている場合や仕様変更などが生じた場合などにも顧客の理解が得られやすく、即払い式に比べ信頼低下などのリスクを減らすことができます。一方で、簡単にキャンセルできる状況のため、最終的な販売数と利益が予想と大きくずれてしまう可能性もあります。定期的な関連情報の配信などで興味を維持させる施策を行うと良いでしょう。
まとめ
予約販売をすることで、商品の需要を予測し生産数を調整したり、在庫切れによる機会損失を防いだりすることができます。魅力的な写真の使用や、予約特典の付与、インフルエンサーの活用などのSNSマーケティングも活用し、予約注文の数を増やしましょう。
Shopifyでは予約販売アプリや予約注文を受け付ける機能のあるテーマを使うことで、簡単に予約販売の設定をすることができます。ECサイトで予約販売を行いたい方はShopifyをお試しください。
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よくある質問
予約販売は英語では何?
予約販売は英語でpre-order(プリオーダー)です。Pre-orders now open!(予約販売ただいま開始!)などと使われます。
なぜ予約販売をするの?
予約販売を行うのは、需要を予測して生産数や売上予測を立てて発注数を最適化し、余剰在庫や在庫切れを防ぐためです。また、予約注文を受け付けることで在庫切れによる機会損失を防ぐ目的もあります。
予約販売の手法にはどんなものがありますか?
予約時に支払いが完了する即払い式、予約後に支払いを行う後払い式などがあります。
即払い予約販売のメリットは?
予約時に支払いが完了するためキャンセル率が低いのがメリットです。キャンセル率が低いため、売上予測が立てやすく、在庫処分のリスクも少なくなります。
Shopifyで予約販売を行うことができる?
Shopifyでも予約販売を行うことができます。予約販売機能のついたテーマを使用してECサイトを立ち上げるか、予約販売アプリをダウンロードし設定することで予約販売を開始することができます。
文:Ryotetsu イラスト: Eugenia Mello