オンラインビジネスを始めるには、今が絶好のタイミングです。しかし、起業家として他社と差別化し、存在感を示すことは、これまで以上に難しくなっています。
現実には、消費者はかつてないほど多くの情報にアクセスできるようになっています。常時インターネットに接続できる環境は、競合他社が販売している類似商品を数クリックで見つけられることを意味します。消費者は、他の場所でより安く購入できるかを調べ、簡単にあなたの設定価格と比較できます。
一般的に、価格は季節的な購入決定において最も影響力のある要素であり、利便性や配送時間、無料返品オプションを上回ります。しかし、価格比較が小売業者を悩ませるのは、eコマースだけではありません。5人に1人が、買い物中に「ほぼ常に」モバイルデバイスを使って価格を比較しています。
競争力のある価格設定とは、あなたが提示している商品価格を競合他社の類似商品と比較することを意味します。その目的は、価格を高く設定することで顧客を遠ざけているのか、過度に値引きすることで利益を失っているのかを見極めることです。
このガイドでは、いくつかの競争力のある価格設定戦略を紹介し、それぞれがあなたのビジネスにとって適切かどうかを検討します。
競争力のある価格設定とは?
競争力のある価格設定とは、競合他社が販売している類似商品の価格を基準にするプロセスであり、市場シェアを獲得するのに役立ちます。
競合他社の価格を知ることで、市場の選択肢を理解できます。そこから、あなたの商品がそれらの選択肢の中でどのように位置づけられているかを評価できます。これにより、ポジショニング、バリュープロポジション、および価格が顧客の認識を形成するのに役立ちます。消費者に対して商品の全体像を伝えられるようになります。
競合他社の価格を認識していない場合、消費者が市場であなたをどのように認識しているかについての盲点が生じます。あなたの商品は、金額に見合ったお得な商品ですか?それとも、購入後に後悔するような贅沢品ですか?どちらの答えも、売上や利益を逃すことを意味する可能性があります。
価格が高すぎると潜在的な顧客を逃し、低すぎると商品をその価値よりも安く販売することになります。では、どの価格設定方法が最適なのでしょうか?見てみましょう。
競争力のある価格設定の3つの種類は?
競争力のある価格設定には、浸透価格設定、プロモーション価格設定、キャプティブ価格設定の3つの種類があります。それぞれのモデルを詳しく見て、目標や具体的な状況に応じてどのように使用するかのアドバイスを提供します。
浸透価格設定
浸透価格設定とは、競合他社に対抗して最も低い価格をつけることです。この価格設定の目的は、消費者の注目と市場シェアを迅速に獲得することです。
競争力を維持するためのこの大幅なコスト削減は、スケールメリットがない限り、利益を犠牲にすることを意味します。例えば、コストコのようなデパートは、数百万の顧客が少額ながらも利益を生むため、最も安い価格で商品を提供できます。
浸透価格設定モデルは、初回購入後に顧客との関係を築くことができれば成功します。価格で顧客を獲得した後は、より利益率の高い商品をクロスセルやアップセルしていきましょう。
メリット ✅
- 競合を上回る価格が顧客の注目を集めます。
- デジタルマーケティングキャンペーンの 顧客獲得コスト(CAC)が低い。ターゲットオーディエンスは、競合他社よりも安い場合、広告された商品をクリックして購入する可能性が高くなります。
- 比較的シンプルな成長モデルで、eコマースブランドを拡大しやすいです。人々は、他の場所よりも安いからあなたの商品を試します。購入後の関係を続けることで、比較的早く顧客基盤を構築できます。
デメリット ❌
- 多くの小規模企業は、競合他社の価格を下回ることで市場シェアを獲得するために初期損失を負担する余裕がありません。
- 「常に最安値」の価格設定はブランド価値を低下させ、より高い支出に対して異議を唱える最も利益の少ない顧客を引き寄せます。顧客が大量かつ頻繁に購入することを期待することになります。
- 価格を徐々に引き上げて競合他社よりも高くなると、特に低価格が以前の市場価格購入の決定要因であった場合、既存の顧客基盤を失うリスクがあります。
- 競合他社があなたの価格を一致させたり、下回ったりすることができるため、このモデルは「底を目指す競争」になります。生産コストに制約がある場合、競争できなくなる時が来るかもしれません。
プロモーション価格設定
プロモーション価格設定とは、期間限定で商品価格を割引することです。在庫を処分したり、話題を作ったり、ブランドに注目を集めたりする際に有効です。
「他の国では私たちのように割引は行われません。私たちはアメリカの消費者に、すべてがセールになるのを待つように教育してきました」
ケイティ・トーマス、カーニー消費者研究所のリーダー
プロモーション価格は、ブランドに注目を集め、新しい顧客を引き寄せるために断続的に使用されると最も成功します。しかし、プロモーション価格のリスクは、消費者が商品がセールになるまで購入をしぶるようになり、セールや割引が予測可能になると定価を支払わなくなることです。これにより、ブランドの価値が低下し、ビジネスにとって望ましくない顧客を引き寄せる危険性があります。
メリット ✅
- 商品は低価格に固定されません。顧客は特別な取引を購入していることを知っています。
- 新しい顧客はあなたの商品を低リスクで試せるようになります。これによりブランドへの親しみが生まれ、顧客はその価値を知っている場合、高価格の商品を購入する可能性が高くなります。
- フラッシュセールは 衝動買いを促進します。アメリカの消費者は、平均で毎年5,400ドル(約81万円)をフラッシュセールに使います。価格が急上昇する前に、商品を「今すぐ」購入するインセンティブがあります。
- シーズンの終わりに在庫を迅速にかつ簡単に処分できます。在庫を持つよりも、推奨小売価格(RRP)を値下げして販売する方がコストを抑えられます。
デメリット ❌
- フラッシュセールが多すぎると、 ブランドに良くないイメージが定着します。「割引」または「セール中」のブランドとして知られてしまうことになるでしょう。
- 競合他社の価格モデルと比較して、商品の価格があまりにも安いと、実際はそうではないのに商品が安っぽいという印象を抱かれてしまう危険があります。
- 消費者は、月末やブラックフライデーのセールなど、予測可能なセールを待ちます。セール日が簡単に予測可能になると、利益を食いつぶすことになります。待てば安く手に入ると知っている場合、買いしぶりが生じます。
キャプティブ価格設定
キャプティブ価格設定とは、競争力のある価格でコアな商品を提供し、補完的な商品のセットを提供することです。この価格戦略は、コア商品の機能を追加したり、その寿命を延ばしたりする追加アイテムがある場合に非常に効果的です。
例えば、プリンターはしばしばセール中または非常に手頃な価格で販売されています。しかし、インクが切れると高額なリフィルが必要になります。プリンターメーカーは、商品にプレミアム価格を設定する必要はありません。なぜなら、インクの販売で利益が出るからです。
同様に、ゲーム機は利益無視で販売する一方で、ゲームやアクセサリーをゲーム機と共に販売することで、より高い利益率を確保することができます。
メリット ✅
- キャプティブ価格設定は「割引」と見なされず、ブランドの価値を低下させません。
- 持続可能で予測可能な収益のための長期的なモデルです。人々がコア商品をお得に購入すると、追加商品を求めて再度訪れます。これにより顧客の生涯価値が向上します。
- ブランドの周りに防護壁を築くことができます。例えば、AppleはiMacでほとんど利益を上げていませんが、忠実な顧客がハードウェアやApple Musicのサブスクリプション、クラウドストレージなどの高利益の追加商品を購入することで利益を回収します。これらの追加サービスは、利益率が59%と高いです。
- 商品に最も適した競争力のある価格設定戦略です。例えば、コア商品がディフューザーであれば、追加の高価格のエッセンシャルオイルがコア商品からより多くの価値を引き出します。
デメリット ❌
包括的な商品戦略と並行して考慮する必要があるため、より複雑な価格モデルです。全ての在庫、人気のバンドル、類似商品を高価格で宣伝する方法を考慮する必要があります。
割引コードは、(顧客が追加商品を購入していない場合など、他の割引戦略と組み合わせない限り)ほとんど提供されません。
追加商品の価格が高すぎると、ネガティブな印象をもたらすリスクがあります。例えば、インスタックスの顧客からは、カメラに比べてフィルムの価格が高すぎるという不満の声がよくあげられます。
競争市場での価格はどのように決まるのか?
競争市場では、価格は主に需給によって決まります。市場の比較により、企業は顧客が商品に支払う価格の境界を作ることができます。
あなたの商品が競合他社に対してより多くの価値を提供する場合は、プレミアム価格を設定します。商品がほぼ同じであれば、差別化要因がない限り主要な競合他社に近い価格を設定するべきです。
競争力のある価格分析の方法
競合他社と価格で競争する準備はできましたか?競争力のある価格分析を実施し、競合他社の類似商品に対して価格を設定する方法は以下の通りです。
1. 商品を理解する
競争力のある価格分析の最初のステージは、商品が競合とどのように比較されるかを理解することです。比較表を作成し、最初の列にはあなたの商品について以下の点をあげましょう。
- 主要な特徴
- ターゲット市場
- バリュープロポジション
- 新しい価格戦略が利益を上げるかどうかを評価するためのコストとマージン
顧客にアンケートを実施し、この価格データを徹底的に理解します。購入確認のメールには、「なぜこの商品を購入しましたか?」といった質問を含めましょう。ここで得られた回答は、あなたの競合分析表のこのセクションを完成させる手助けになります。
「Nolahでは、消費者は最高の商品を最高の価格で手に入れることを重要視しているので、競合比較を直接サイトに掲載しています。他のダイナミックな要素、例えばアメリカでの生産や特許取得済みのマットレス技術とともに、競争力のある価格設定を明示することが、マットレス購入の決断を促す非常に重要な要素です」
スティーブン・ライト、Nolah MattressのCMO兼共同オーナー
2. 競合他社の商品を比較する
価格と特徴の表を作成することで、あなたの商品が競合他社とどのように異なり、また似ているかを明確に表現するのに役立ちます。
クレジットカードの比較ウェブサイトを参考にして、この表がどのように見えるべきかを考えます。Credit Card Insiderは、人気のある銀行からのクレジットカードを取得するために必要な年会費、APRレート、および最低クレジットスコアをリストしています。
比較表には、各社のマーケティング手法や商品のポジショニングなども記載されています。
競合とあなたの商品のターゲットは同じですか?そうでない場合、誰をターゲットにしているのでしょうか?これらの要素は、商品の価格に影響を与えます。顧客ペルソナの中には、商品が日常生活で重要である場合、プレミアム価格を支払うことを厭わない人もいます。(この後詳しく説明します)
Yorkshire Fabric Shopのマーケティングディレクター、ジェイ・ソニは、競合他社の価格変動も考慮するべきだと述べています。「割引、セールの頻度、セール時の割引額を考慮してください。これらは、類似の商品を扱っている場合に特に重要です」
最後に、各競合他社が販売している類似商品の小売価格をリストします。完全なリストを三角測量することで、市場に対する価格の境界が見えてきます。
3. 最適化して学ぶ
価格帯が決まり、競合他社との差異が明確になったら、価格帯内のいくつかの価格でA/Bテストを実施して、最も効果的な価格を特定します。
もしあなたが50ドル(約7500円)の商品を販売していて、競合他社が45ドル(約6750円)で販売している場合でも、売れ行きが順調なら、5ドル(約750円)の差を削って利益率を縮小する必要はありません。
同様に、競合他社が50ドル(約7500円)で販売しているところ、あなたの商品の価格は75ドル(約1.1万円)あったとしても、品質が優れているなら顧客は価格が高くてもを支払い続けるかもしれません。商品ページ、広告クリエイティブ、マーケティング戦略にいくつかの調整を加えることで、あなたの商品が他に比べて25ドル(約3750円)の高額である根拠をアピールし、顧客を納得させてください」
4. このプロセスを頻繁に繰り返す
競合他社が価格を調整したり、新商品が市場にリリースされたり、企業が商品の品質向上のために投資したりします。この過程で、価格が上昇することもあります。
このプロセスを四半期ごとに繰り返して、商品が高すぎるか、安すぎるかを確認します。
競合ベースの価格戦略の実施方法
競合他社の価格に対してあなたの商品価格をベンチマークする準備はできましたか?不必要な値下げで損失を出さないために、競合ベースの価格戦略を実施する際に考慮すべき5つのポイントを以下に示します。
価格マッチングをデフォルトにしない
多くの小売業者がやりがちな間違いは、必要でない場合にも競合他社の価格に常にミートしたり、時にはさらに値下げしたりすることです。
攻撃的な価格マッチングは、値崩れを引き起こす可能性があります。複数の競合が商品を割引し始め、セグメント全体の収益性が低下します。これは関係者全員が損失を被ることになります。
「競争力のある価格設定は、競合他社を下回る価格を提供する方法としてよく語られますが、それが常に賢明な戦略であるとは限りません。そのような罠に陥って自らの成長を阻止しないようにしましょう」
スティーブン・ライト、Nolah MattressのCMO兼共同オーナー
不必要な値下げの打撃を受けるのは利益率だけではありません。研究によると、消費者は価格を使用して商品の品質を判断します。
VTR Learningの商品品質マネージャー、ブレイデン・ノーウッドは、「実体験から、価格を低く設定しすぎると、顧客は商品の品質が競合他社と同等であるか疑問に思うことがあります。ベンチマークは、顧客があなたの商品を心理的に評価するのを助けることと、他の選択肢に対して手頃な代替品を提供することの両方に関わっています」と述べています。
商品の品質を考慮する
すべての商品が同じではありません。消費者の多くは、品質がよければ価格が高くても購入します。。
例えば、無地の白いTシャツを販売するブランドの競合価格分析では、持続可能な素材で作られているか、有名ブランドによって販売されているか、アメリカで製造されているかによって、100ドル(約1.5万円)以上の違いが生じることがあります。
価格比較表を思い浮かべてください。競合他社の商品説明、レビュー、仕様を確認して、どのように価格を設定しているかを見極めます。商品の品質が優れている場合、高い価格を設定する余地があります。
顧客セグメントを評価する
価格に影響を与えるのは商品の品質だけではありません。顧客グループにより、類似の商品に対して異なる価格を支払う意欲があります。
競争力のある価格分析を通じて見出せる例を以下に示します。
- 学生は50歳の人よりも厳しい予算を持っています。
- メタリカのファンはローリング・ストーンズのファンよりも商品に多く支払います。
- アマゾンの顧客はソーシャルメディアの購入者よりも価格に敏感です。
- 東海岸のホットドッグスタンドの顧客は、西海岸の顧客よりも便利さに対してプレミアムを支払う意欲があります。
競争力のある価格分析に戻り、各競合のターゲット市場を比較します。正確な比較のために、あなたのターゲット市場と最も重複している商品を販売しているブランドを見つけてください。
サブスクリプション向けに競争力のある価格設定を保存する
すべての商品に競争力のある価格を適用させる必要はありません。再購入の際に魅力的な価格を提供し、顧客ロイヤルティを構築し、顧客の生涯価値(CLV)を増加させ、予測可能な収益を生み出します。
Olipopは、顧客が単品の飲み物ではなくサブスクリプションバンドルを購入するように促しています。顧客体験とリテンションのディレクター、エリ・ワイスは、オンラインショッピングをする顧客がサブスクリプションモデルを通じてカートンを購入すると競争力のある価格を得られると説明しています。
価格と品質で競合を打ち負かす
価格設定の決定を行う際、競合他社の小売価格をそのままベンチマークにしないでください。商品の価値は、品質、使用法、ターゲット市場によって異なります。最初に見た競合に基づいて価格を設定するのは間違いです。
競合他社の類似商品を対比させた比較表を作成しても、他社より高い価格を設定することを恐れないでください。商品が追加料金に値することを証明できる限り、利益率を縮小する必要はありません。
競争力のある価格設定に関するFAQ
競争力のある価格分析の方法
競争力のある価格分析を実施するには、比較表を作成します。商品の価格、ターゲット市場、ユニークな販売提案、特徴を詳細に記載します。競合他社が販売している類似商品についても同様に繰り返します。顧客が自分で価格比較を行ったときに見えるものを三角測量できるようになります。
競争力のある価格設定のメリットとデメリットは何ですか?
顧客はオンラインで商品を購入する際に価格比較を行うことがよくあります。競合他社の価格に合わせる(またはそれを上回る)ことが、顧客があなたのeコマースストアから購入するかどうかの決定要因になる可能性があります。しかし、低価格では利益率が犠牲になります。また、割引ブランドというイメージが定着してしまう恐れもあります。
競争力のある価格設定の例は何ですか?
Appleの競争力のある価格戦略は、Macを原価で販売し、iPhoneをわずか25%の利益率で販売することで、これらの商品をターゲット市場に手頃な価格で提供することにあります。ブランドは、Apple Musicのサブスクリプション、アプリのダウンロード、充電ケーブルなど、それ以外の商品で利益を回収します。これらの追加サービスは、利益率が59%です。
比較価格設定とは何ですか?
比較価格設定の方法は、小売業者が商品の価格を推奨小売価格(RRP)や競合他社の価格と比較することです。例えば、300ドル(約4.5万円)のテレビを販売している場合、比較価格設定を使用して、競合他社が350ドル(約5.2万円)で販売している、またはRRPが400ドル(約6万円)であることを示します。いずれにせよ、顧客はお得な取引を得ていると感じます。
コストプラス価格設定とは何ですか?
コストプラス価格設定は、企業が商品の価格を製造費用に一定の割合を加えて決定する価格戦略です。この割合は、諸経費をカバーし、利益を提供することを目的としています。
イラスト:ジョン・クラウス